国道330号に雨が降っていた。車窓の外に降る2月の柔らかな雨は、どこかセンチメンタルだった。その雨の中を、ぼくは車を走らせて、かつてコザ市と呼ばれた地域に向かっていた。
国道沿いに米軍基地のフェンスが長く続く側道を、大柄な白人のジョガーが雨に濡れながら走って行く。金色の髪を雨に濡らしながら。
そんな風景がセンチメンタルに見えたのは、きっと、車内に流れる松任谷由実の曲のせいだ。
この「ノーサイド」という曲の中で描かれる若者のモデルになったのは、ぼくが卒業した高校の先輩だという噂があった。本当かどうか知らないが、この曲が流行った頃、ぼくの高校の生徒たちは皆そう信じていた。この曲が不意に流れてきたせいで、滅多に思い出すことのない10代の頃の事を思い出していた。センチメンタルな雨の中で。
曲が終わってからも、景色はセンチメンタルに見えた。
コザと呼ばれた街を歩きながら、この日はそんな心持ちでシャッターを切った。
でも、そんな心情が画に表れている事もないだろう。