南風通信

みなみかぜつうしん あちこち 風のように

アンドロイドは電気的味見をするのか

 最近、中国に関する新聞記事を読んで気になったので、そのことを。

 

 

 記事が伝えるには、中国では飲食店の無人化が進んでいるそうだ。現地の新興企業がAIとロボットを組み合わせて「AI食堂」なるモノの出店を進めているという。飲食店のコストは20%を人件費が占めており、それを省いたこの無人店舗は料理を安く提供できるらしい。メニューはセロリとエビの炒め物」「枝豆と鶏肉のあえ物」などが常時10~20種類あり、シェフと見分けのつかない料理をロボットが提供しているという。

 

飲食店の「無人化」が進む中国で、新たに人工知能(AI)を活用した店舗が登場した。新興の上海熙香芸享電子商務(シーシャン)がAIとロボットを組み合わせ、需要予測や調理などを自動化した店を開発した。中国では人件費高騰などを背景に人に頼らない店舗運営への需要が高まる。100兆円規模の外食市場を巡り、無人化競争はさらに激化する。(2022.8.10 日経新聞)」

 

 

 同じ日の同紙には、インターネット大手の百度(バイドゥ)が完全無人タクシーの運営を始めたとある。同じ日の紙面に「無人化」の記事を並べる作りは、この新聞がどういう意図を持っていたのか分からないけど、ぼくには「中国はサービスの無人化が進み、いずれ失業者が溢れるのでは」と読めてしまった。

 14億を超える人口を抱える国で、働き口を無くすようなこの動きを、彼の国を司る人々はどう考えているのだろう。驚くことに中国も少子高齢化が進み、人口減少が見込まれるというではないか。しかし、少子高齢化を先に歩み、人手不足の日本とは事情が違うんじゃなかろうか。ここでは高騰する人件費のカットがその一番の動機のように書かれている。他国の事ながら、ぼくにはあまり明るい未来像にはならなかった。現在の中国はある部分、行過ぎているように資本主義的だ。

 

 子供の頃の中国のイメージといえば、人民服を着た人たちが乗る大量の自転車の群れだった。それがたった2,30年で「AI食堂」に「無人タクシー」の国だ。戦後の日本を想起させる高度経済成長を、この国は成したのだろう。

 

 中国に限らずお店の自動化・省力化が進む事で、地元の人々に愛される「小さいけれど良いお店」が無くなっていきそうで寂しい。そういった良いお店の大きな要因は、そのお店をやっている「良い人たち」だったりするのだけれど。

 大規模チェーン店よりも、そういったお店に行こうと思ってしまうぼくは、きっと時代から少しずれている。でも、自分の大事なお金は心地よく使いたいから、これでいいのだ。なんだか最後は、バカボンのパパ風になってしまった。

私的不定期名曲選『この曲もえーやん!』 山下達郎「LOVE'S ON FIRE」


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今夜は山下達郎のコンサートに行ってきました。

音楽の職人による全力のパフォーマンスは、鳥肌ものでした。

この「鳥肌が立つ」って最近の若いタレントさんなんかがよく言うフレーズですが、

「いやいや、そんなに鳥肌って簡単に立たないだろう!」と心の中で突っ込んでいました。

 

しかし、今夜のコンサートの一曲目のイントロのギターが流れてきたときに、体の内からゾワゾワと湧き上がるものがあったのです。会場内は照明が落ちて暗かったので、実際に鳥肌が立っていたかどうかは分かりませんが、まあ「鳥肌もの」の感覚でした。

 

達郎さん、来年には70歳だって。嘘でしょう?というくらいのハイレベルなパフォーマンスに圧倒されました。ぼくも明日からも頑張ろう。

 

コロナ禍の下で「不要不急かどうか」が基準になった事があったけれど、今夜のコンサートを体感して、プロの作りあげるエンターテイメントは「不急」かどうかは分からないけど、絶対に「不要」ではないと確信したのでした。

 

酷暑をインドアで過ごす

 

最近の暑さがあまりにも凶暴で、日中に野外で好きな釣りをして過ごすというのもおっくうになっている。正確にはおっくうというのは違う。釣り自体はいくらでもやっていられるのだけれど、やや生命の危険を感じるという感じか。それくらいにこの夏も暑い。

沖縄にいた頃は、こんな時には「沖縄ぜんざい」と呼ばれるかき氷を食べて涼を取ったものだ。これが沖縄の気候の下で食べるからなのか、ふつうのかき氷の何倍も美味しく感じられる。「沖縄ぜんざい」が恋しい7月を、今年は九州の地方都市で過ごしている。

沖縄には総じて良い思い出しか無いのだが、一つ物足りなかったと思うのは、沖縄には鉄道が走っていないということだった。べつに「鉄道マニア」ではないけれど、四国にいたときに乗ったローカル鉄道には魅力を覚えた。山が重なり流れてゆくような景色を窓外に見ながら、清流沿いを走ったあの時間の至福を忘れられない。

九州に戻ってから新しい仕事に就き、まだ落ち着かない日々を過ごしているが、もう少し落着いたら鉄道の一人旅にでも出たいものだなあ、などと思っている。しかし、またコロナの事もあるし、様々な事柄がもう一つ整う感じもなくて、計画を立てるまでに至らない。

そんな事だから、折角の夏をどう過ごそうかと考える楽しみを、今年は逸している。今のところ。

 

最近の楽しみと言えば、好きな映画監督の作品をBlu-rayでのんびり鑑賞することくらいか。そんな訳でヴィム・ヴェンダースの古い映画を立て続けに観ている。夕べは「パリテキサス(1984年)」を観た。

この映画を観るのは二度目か三度目かで、今回は多分20数年ぶりくらいだと思う。以前観たときには無かったことだが、主人公の中年男と、別れた若い元妻の女とのガラス越しの会話のシーンに少し涙した。いわゆる年とともに涙腺が緩くなるというやつだろうか。

この映画のテーマは重く陰鬱で、決してエンターテイメントではないし、観ていて気晴らしになるものではない。そういった面白さというのはないのだが、この監督の特にこの時期の作品は、映像が写真のように美しく、そして詩的なのだ。もう一つ音楽も良い。

世の中に(劣化版の、もしくは商業的すぎる)エンターテイメントが溢れている今のような時代で、ヴェンダースの重めの映画の方がぼくの精神を落着かしてくれる。良質のドキュメンタリーが、時には観ている者の癒やしになるのに似ているかもしれない。

ヴェンダースの映画は長い間、きちんとした形で商品化されることが無かったのだが、嬉しい事に最近Blu-rayボックスが発売されたばかりだ。(それも3セットも!)

今月はこの監督の作品を4本観ることができた。まだ、ストックはあるし、しばらくは自宅のTV前で暑い夏をしのぐ事が出来そうだ。

 

私的不定期名曲選『この曲もえーやん!』 STING / Englishman In New York


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最近、TVがどの局も同じニュースを流し続けた夜に、ヴィム・ヴェンダースの古い映画のブルーレイを続けて観た。

 

「都会のアリス」「まわり道」「さすらい」の三本はロードムービー三部作と呼ばれ、このドイツの映画監督の、特に初期の代名詞的作品だ。

 

ぼくは少年時代からロードムービーというものが好きだった。後の転勤族生活へ続く潜在的な要因は、実はこのロードムービー好きから来ているのでは無いかと、思ったりもする。



久し振りにちゃんとしたロードムービーを観てみると、人生の初期においての、未成熟な若者の不安定さを表すには、とても有効な形式だと思った。

 

ロードムービーに魅せられた頃のぼくも、とても未成熟だったのだ。では、今は?

少しは成熟したのだろうか。しかし、同年代の人なら少しはご同意頂けるように思うのだけど、成熟と老化の境目は曖昧なように思う。成熟にはそれなりの経験と自己練磨が必要に思うが、老化は時の流れの結果だ。しかし、そんな事さえどっちだって良いじゃないかと思えるようになってきた。これは成熟のなせる業か、老化によるこだわりのなさか。

 

異邦人の歌をここに残しておこう。こんな気持ちで若い時期を過ごした事を思い出しながら。

 

 

 

 

街の記憶31

 

夏の日は、街に光が溢れていて、街撮りの写真散歩にはもってこいの季節だ。

写真には良いのだが、写真を撮っている者には、ちょっと厳しい。

 

夜に賑わう歓楽街を、白けたように佇む昼の間に歩くのが好きだ。

人気は無く、結界が破られて魔力の及ばなくなったような路地に踏み込む。

 

この日の後半は、ビールをちょっとばかり飲んだから、そんな画になっているかもしれないな。

 

街の記憶30

 

7年間大分を離れていたら、街並みが様変わりしていた。

7年前といえば、GRを手にしてカメラを始めたばかりで、とにかく写真を取ることが楽しくてたまらない時期だった。

久し振りに大分の街を撮ろうと出かけたが、その頃に撮ったビルや古いバーが無くなっていて驚いた。ぼくが十代の頃に初めてテキーラを飲んだバー(時効です)、その名も「テキーラ」が無くなっていて、時間貸しの駐車場になっていた。時は流れている。

そして、街は以前よりも、小綺麗になったように見える。

 

今の街を撮ろうと思う。うろうろと歩きながら、今、目の前の街を、しっかり撮っておこうと思う。

 

釣れない釣り人の幸福な水辺6


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沖縄から友人がやってきた。

元の職場の同僚だ。

根っからのバス釣り好きの彼は、以前から飛行機を使って、沖縄から大分への釣行を行っている。

何故、わざわざ大分まで釣りの為にやってくるのだろうか。

 

外来生物法の施行から、何かと悪者にされるブラックバスだけれども、本番アメリカではフィッシングライセンスを発行して(お金を取って)、水産資源の保護や自然環境の整備に当てている。そういった制度が整っている事もあり、アメリカでバス釣りは、ポピュラーな趣味の一つになっている。

 

有り難いことに、ここ大分県ではこのアメリカの方式に習うように遊漁券を販売していて、ブラックバスの存在を認めている水域が多い。沖縄の友人がしばしばやって来る芹川ダムも、そういった方針を取っているダム湖の一つだ。ここでは、バス釣り人たちは公に釣りを楽しむことができる。

 

ここには九州全域から釣り人がやって来ていて、駐車場には、福岡、北九州、熊本ナンバーのばかりで、地元大分ナンバーの車の方が少ないくらいだ。近くの道の駅にも人が多く栄えているように見える。湖のすぐそばにはゲストハウスもできた。きっとそれなりに経済効果もあるのだろう。

 

今日は、沖縄の友人と7時間ロッドを振っていた。二人とも魚に触る事が出来て良かった。

一足早い夏休みを取っている彼は、今夜はゆっくりと温泉に浸かって、久住の星空でも眺めているのではないか。羨ましいことに、彼は明日も明後日も釣りだそうだ。雨が降らなければいいと思う。大分の豊かな自然を満喫して欲しい。