南風通信

みなみかぜつうしん あちこち 風のように

酷暑をインドアで過ごす

 

最近の暑さがあまりにも凶暴で、日中に野外で好きな釣りをして過ごすというのもおっくうになっている。正確にはおっくうというのは違う。釣り自体はいくらでもやっていられるのだけれど、やや生命の危険を感じるという感じか。それくらいにこの夏も暑い。

沖縄にいた頃は、こんな時には「沖縄ぜんざい」と呼ばれるかき氷を食べて涼を取ったものだ。これが沖縄の気候の下で食べるからなのか、ふつうのかき氷の何倍も美味しく感じられる。「沖縄ぜんざい」が恋しい7月を、今年は九州の地方都市で過ごしている。

沖縄には総じて良い思い出しか無いのだが、一つ物足りなかったと思うのは、沖縄には鉄道が走っていないということだった。べつに「鉄道マニア」ではないけれど、四国にいたときに乗ったローカル鉄道には魅力を覚えた。山が重なり流れてゆくような景色を窓外に見ながら、清流沿いを走ったあの時間の至福を忘れられない。

九州に戻ってから新しい仕事に就き、まだ落ち着かない日々を過ごしているが、もう少し落着いたら鉄道の一人旅にでも出たいものだなあ、などと思っている。しかし、またコロナの事もあるし、様々な事柄がもう一つ整う感じもなくて、計画を立てるまでに至らない。

そんな事だから、折角の夏をどう過ごそうかと考える楽しみを、今年は逸している。今のところ。

 

最近の楽しみと言えば、好きな映画監督の作品をBlu-rayでのんびり鑑賞することくらいか。そんな訳でヴィム・ヴェンダースの古い映画を立て続けに観ている。夕べは「パリテキサス(1984年)」を観た。

この映画を観るのは二度目か三度目かで、今回は多分20数年ぶりくらいだと思う。以前観たときには無かったことだが、主人公の中年男と、別れた若い元妻の女とのガラス越しの会話のシーンに少し涙した。いわゆる年とともに涙腺が緩くなるというやつだろうか。

この映画のテーマは重く陰鬱で、決してエンターテイメントではないし、観ていて気晴らしになるものではない。そういった面白さというのはないのだが、この監督の特にこの時期の作品は、映像が写真のように美しく、そして詩的なのだ。もう一つ音楽も良い。

世の中に(劣化版の、もしくは商業的すぎる)エンターテイメントが溢れている今のような時代で、ヴェンダースの重めの映画の方がぼくの精神を落着かしてくれる。良質のドキュメンタリーが、時には観ている者の癒やしになるのに似ているかもしれない。

ヴェンダースの映画は長い間、きちんとした形で商品化されることが無かったのだが、嬉しい事に最近Blu-rayボックスが発売されたばかりだ。(それも3セットも!)

今月はこの監督の作品を4本観ることができた。まだ、ストックはあるし、しばらくは自宅のTV前で暑い夏をしのぐ事が出来そうだ。