南風通信

みなみかぜつうしん あちこち 風のように

カレー皿、サボテン、ライ麦畑でつかまえて

2023.4 大分市

 

コロナが5類に移行され、毎日発表されていた感染者数や志望者数が報道されなくなって、いよいよ街に日常が戻りつつある。

 

この週末、お買い物に出かけた地元百貨店のトキハ本店も、店内にお客さんの姿が増えていた。商品を手に取ったり、かがみ込んで眺めたり購買意欲も随分復活してきたようだ。やっぱり、お買い物って楽しいもんね。

 

それで、ぼくは何を買ったかっていうと、5枚組のカレー皿セットとサボテンの植え替え用の土と鉢、それに村上春樹訳の「キャッチャー・イン・ザ・ライ」。

 

カレー皿はセールで20%オフになっていたものを衝動買いした。オーソドックスでクラシカルなカレー皿なんだけど、白地に描かれた紺色の模様がとても懐かしい感じがして買ってしまったのだ。小学生の時に、ともだちの誰かの誕生会によばれてご馳走になったカレーライスが、これと同じカレー皿によそわれていた気がする。形と模様を手に取って眺めながらそう思った。あの時のカレーライスの味と美人のともだちのお母さんを思い出す。

 

サボテンは高知に住んでいたときにお客さんから頂いたもの。随分と雑に扱って、高知から沖縄、そして大分へと、ぼくと一緒に引越を続けてきたものだ。とても小さなピンクのプラスチックカップに植えられたもので、水やりもあんまりした記憶が無いのだが、しぶとく生き抜いている。

さすがに5年近くも一緒に暮らしていると、愛着が沸いてくる。今更過ぎるけど。

それで、サボテンの事について、トキハの6階の観葉植物屋さんで相談してみた。対応してくれたおねえさんは、とてもテキパキとしていて、しかも植物の育成についてとても詳しかった。ぼくの前には、常連らしい高齢男性が自宅の植物の事で相談していた。面倒見の良いおねえさんなのだ。

そのおねえさんの的確で豊富な情報量の説明は、素人のぼくにも分かりやすく、とても好感が持てた。豊富な情報量と面倒見の良さの割に商売っ気が少ないのも素敵だった。サボテン用の土と鉢を袋に入れてもらいながら、またここに何か植物を買いに来ようと思った。

 

トキハの店内の書店でサリンジャーの「ライ麦畑でつかまえて」をみつけて手に取って書き出しを読んだ。学生の頃に「この小説がとても好きだ」と言って同級生の女の子が貸してくれた事があった。最初の数行の記憶は鮮明で、あの時の事が思い出された。しかし、そこから先の記憶が曖昧で、物語の筋が思い出せないのだ。それでもう一度読んでみようと思ったのだが、同じ本を読むよりもと村上春樹訳の方を買った。読んでみれば若かりし日のこの本に対する感情が蘇ってくるのか楽しみだ。