南風通信

あちこち 風のように

四国みぎしたフリー切符の旅(往路編その3)

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海岸沿いの国道55号をバスは走る。平日の午前中で乗客は少ない。ここは「四国のみぎした」の室戸岬だ。

室戸岬をめぐる、この国道沿いの景色は、海の美しさと町の寂しさの組み合わせで構成される。実際、日本の地方都市ではどこにもあるような状況だと思うが、この一帯も高齢化と人口減少に直面しているのだろうと思う。

バスの車窓に流れる景色で、廃校となり蔦の絡んだ古びた校舎、廃業したホテルの色あせたパステル色の壁、一棟で売り出しの看板を下げた空っぽのアパートなどが印象に残りました。しかし、それらの景色も、太平洋がキラキラと輝く海辺の美しい光に照らされて、通りすがりの旅行者には寂しさを感じさせないのです。

自分の知らない町に、知らない人たちの生活がある。旅行に出るとそういった事を思います。一人旅はいつだって少しセンチメンタルになるのでしょう。

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バスは10時41分に甲浦駅(かんのうらえき)に到着しました。ここで阿佐海岸鉄道に乗り換えです。駅舎の中に入るとぼく以外誰もいない舎内に、職員と思しき(?)二人のおばちゃんの会話の声が聞こえてきます。そのうちの一人のおばちゃんがぼくに気付き「列車に乗るのかえ?」と声をかけてくる。つぎの列車に乗る事と切符も持っている事を伝えると「ああ、そう」と言って、また二人の井戸端会議風の会話へ戻っていきました。

おばちゃんたちの会話が耳に入って来ます。

「あん子はいつまでここにおるんかなあ」「どうやろううねえ」「でも、あん子はここが好きじゃちゆうとったき」「でも、わからんなあ」

勝手に推察するに、孫娘が年頃に差しかかろうとする年齢で、私はここにおるよ、と言っておばあちゃんを喜ばすけど本当にここに残ってくれるだろうか、というような内容なのだと思う。(たぶん)

この旅のルールで、スマホも本も見ないと、人の会話がやたら耳に入って来ます。盗み聞きするつもりはないけど聞き耳を立ててしまう。

ここ甲浦を含めて僅か3駅しかない阿佐海岸鉄道は、沿線の人口が少なく開業以来黒字になったことがないそうです。静かな駅舎内でおばちゃんたちの会話がずっと続いていました。

この駅舎に一冊のノートが置いてありました。「たびだより」というノートは、ここを訪れた旅行者が書くためのノートです。懐かしい気持ちがしてぼくも記入しました。

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11時11分発の列車で2駅先の海部(かいふ)へ。11時22分には海部駅に到着です。ここで昼食にするつもりです。事前に調べてあった「のなみ」へ向かいました。ここは、「お好み焼き」と「かしわ焼」が美味しいらしい。早速、注文します。「かしわ焼」はにんにくの効いたみそだれで鶏肉と玉ねぎを炒めたもの。これは間違いなくビールに合います。でも、日中ノンアルコールのルールに従って我慢です。

店内は満席で若い二人の店員が大きな鉄板の前で忙しそうに動いています。ぼくの隣にはツーリング途中の3人組のおじさんライダーが座っていました。ここでも自然と会話が耳に入って来ます。どうやら「若い頃に乗っていた車の話」や、「痛風がいかに痛いか。痛風だと何を食べてはいけないか」について話しています。痛風の話題を締めるように一人が言いました「(痛風のせいで)もう食べるもんがねえー。せつねえで」

いか玉とかしわ焼はとても美味しかったです。ビール飲みたかった。

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次の列車まで約一時間。駅周辺をぶらりと歩き。海部駅のホームでぼうっとして列車を待ちます。天気が良く眠くなりそうです。聞こえるのはカラスの鳴き声と、時折、遠くで何かを切る電動ノコの音のみ。こんなにする事もなく、ぼうっとして過ごすのは子供のころ以来じゃないかしら。

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13時47分海部駅発。ここからは阿波室戸シーサイドライン(牟岐線)になります。相変わらず平日の車内は乗客が少ない。ぼくを入れて3人のみ。

この路線は「シーサイドライン」をうたっている割にはあまり海岸線を走りません。車窓に山の斜面の杉の木が流れていきます。

カタタン、カタタンと列車の振動が心地よく、眠くなりながら、とりとめもない思考が頭をめぐります。知らない町を見ながら「もし、自分がここに生まれていたらどうしていただろうか?ずっとここで生きる生活をしたかもしれないし、ここを出たかもしれない。いずれにしても、きっと、それなりに幸せにやっているだろう・・・」

気が付くと乗客のいない車内に一人の若者が乗っていました。彼はこれからどんな人生を送るのだろう。スマホも本も断ってしまうと、周囲の景色や人が親密に感じるような気がします。そんなどうでもいい事を考えていたら、やがて、うつらうつらとうたた寝をしそうになっていました。

14時15分、山河内駅着。停車中に窓外を見ていたら鹿を見ました。たぶん鹿だと思います。たぶん。

14時21分日和佐駅着。ここは平成21年から22年にかけて放送されたNHKの朝ドラ「ウエルかめ」の舞台だそうです。ウミガメの産卵場所として有名だそうで、ちょっと降りてみたい駅でしたが今回は通過しました。

由岐駅の手前で窓外に海が広がりました。岬に尖った岩が点在し、光る波がそれを洗います。

阿南駅を過ぎた頃から景色が変わり始め、中田駅に着く頃には集合住宅が見えるようになってきました。乗客も徐々に増え始めます。

 

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16時3分徳島駅着。人生初の徳島です。ぼくは初めての街を訪れるのが好きなのです。

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ホテルにチェックインし、カメラを片手に街に出ます。ぼくは知らない街での夕食はだいたい居酒屋で済ませます。徳島そごうの中の本屋に行き情報を探す。ここでもスマホは封印です。作家椎名誠の友人で居酒屋探訪家として有名な太田和彦氏が全国の居酒屋を紹介している本を発見し購入。そこに記載されていた「居酒屋とくちゃん」へ。徳島名物の「フィッシュカツ」や「阿波尾鳥」という名前のブランド鳥の串。太刀魚の塩焼きを頂きました。美味しかったのでお酒も追加。徳島地酒の芳水で良い心地。最後は徳島ラーメンの店に移って、ラーメンで締めました。

ようやく、四国みぎしたフリー切符の旅も初日が終わります。ホテルに戻り、明日はどうしようかなあ、と考えながらいつの間にか眠りに落ちました。