2017.7.9
内子8:36発ー宇和島9:30着
香川県の高松駅から愛媛県の松山駅を経て、愛媛県南予の宇和島駅へ至る予讃線は、JR四国管内で最長の路線だ。その行程、全長297キロの大半を、瀬戸内海に沿って東から西へ抜けて行く。愛媛県の松山駅を過ぎ、やがて南下した列車の終着点は宇和島駅だ。ぼくは予讃線の終着点、宇和島駅に向かう列車に揺られていた。
<端っこが好き>
そう言えば、昔から、端っこが好きでした。行けるところまでずっと行って、とにかく前に進んで、もうここでおしまい、という辺境にロマンを感じました。それは、若き日に北九州勤務時代、会社の仲間たちと一台の車で走った長崎県の野母崎半島がそうだったな、と思い出します。この時、仲間内での旅行は決まっていましたが、その行先は決まっていませんでした。
「とにかく、車で行ける所まで行こう。そうだな、西に向かおう。一番西の行ける所まで行ってみよう」
そんな成り行きで決まった行き先は、長崎県の野母崎半島でした。それまで仲間内の誰も知らなかった場所。その若き日の旅行から、随分経った後、父親から野母崎は祖母の出生地だと知らされました。なんだか不思議な気持ちになったのを憶えています。
前日の宿泊地、内子駅を出た特急宇和海5号は、9時30分に予讃線の終着駅、宇和島駅のホームに停車しました。ここで予讃線とはお別れです。この先は、宇和島から高知県の窪川を結ぶ予土線に乗り換えです。ホームを歩きながらレールの敷いてある軌道を眺めると、予讃線のレールが途中で砂利に埋もれて消えています。それは、ここが確かに終着駅だと、無言のうちに宣言しているように見えるのでした。
<四万十川には、カッパが、うようよ居るらしい>
何かの終着点は、また新しい何かの出発点でもあったりします。
ここから、宇和島駅始発の予土線窪川行き列車に乗りました。そして、まず何よりも、今回乗った列車は一風変わった列車なのでした。それは、その外観からしてちょっと変なのです。列車は、上から下に向かって縦に左半分が緑色で、右半分が赤にペイントされています。更に、その車体の側面には何だか分からない動物のようなものが描かれているのです。
変な列車だなあ、と思いながら近づいてゆくと、その車体の前面に大きく「かっぱ うようよ号」と描かれていました。
「ああ、これは、ひょっとして、伊予市駅でSくんが言っていた列車3兄弟の中の一つでは?」
ぼくは、昨日、伊予市駅で出会った小学二年の男の子Sくんの話を思い出していました。
Sくん鉄道を大いに語る↓
JR四国管内には、ちょっと変わった列車が走る区間があって、そこを3台の「変わり列車」が、走っている。そして、その3台の「変わり列車」は、親しみを込めて「列車3兄弟」と呼ばれているとか。この「かっぱ うようよ号」は、その3兄弟内の一つに違いない。
このフリー切符の旅は、基本的に無計画です。かつ、行き当たりばったりを、確固たる唯一の方針としています。更に、スマホ使用禁止をルールとしていますので、今、自分が見ているものが持っている情報の全てです。そんな訳で、「多分そうだろう」で、全てが進んでいきます。それでも、何とかなるんですよね。
列車の中に入って、更に驚きます。列車の車内に大きなショーケースがどーんと据えてあります。その中には、一般の方が制作し、応募したと思われる様々なカッパのフィギュアが、作者のネームプレートと共に展示されています。そして、更に更に、客席の長いシートの端にカッパの母子が乗車しているのです。どーですお客さん。この遊び心、なかなか良いと思いませんか?
後日、調べたところによりますと、海洋堂が高知県四万十町に「ホビー館」をオープンした平成23年から、この「海洋堂 ホビートレイン」は運行を始めたそうです。精密な模型で世界に知られる海洋堂は、創業者が高知県出身だそうです。そして、この創業者の宮脇修氏自身も、カッパうようよ号に負けず劣らず、魅力的な人のようでした。大阪で一坪半の模型店から出発し、失敗と紆余曲折を繰り返しながら、世界に名だたる「海洋堂」を作っていくまでのエピソードは「土佐のいごっそう」の一代記としても面白いものですが、ここでは割愛します。興味を持たれた方は、一度調べてみられるといいかもしれませんよ。
この記事を書くために、カッパうようよ号を調べていて、今回、驚くべき発見をしました。このかっぱ うようよ号は、発車時に警笛を鳴らすのですが、その警笛が、なんと「カッパの鳴き声(?)」だというのです。この旅の最中、この列車に乗っている時には、その事を知らず気づきませんでした。海洋堂の遊び心恐るべしです。重ね重ね、どーですお客さん。損はさせませんよ。乗っていきませんか?
9時39分、カッパうようよ号は、沢山の遊び心と乗客を乗せて、次の目的地である土佐大正駅に向けて出発するのでした。旅はもう少し続きます。
カッパの鳴き声の警笛↓
つづく