「若き日に旅をせずば、老いての日に何をか語る」とゲーテが言ったとか。
ぼくは若き日に旅をしてこなかった人だと思う。だけど、転勤族として知らない街を転々としてきたので、それを旅だと考えれば、人生そのものが旅のようだ。
若き日の数少ない旅の中で、北海道を5日間かけて回ったことがある。釧路まで飛び、そこからレンタカーで走り網走を抜け、道北、宗谷岬へ。そして、稚内からは船に乗り礼文島に渡った。思えば、もうあの北海道旅行から20年ほどの年月が経っているのだ。驚くことに。
その時に買ったマグカップは、今も大切に使っている。
最近気が付いたんだけれど、ぼくには記念品としてマグカップを買うという癖があるようだ。
これは、高知県津野町で行われたお茶のイベントで買ったカップ。津野町は山間の静かな町で、お茶の産地だ。空気が澄んでいて夜になると星空が素晴らしいところ。高知市内からも随分遠いこの町に、もう一度行けるだろうか、と思ってしまう。
こんなのもある。1996年か97年に鹿児島県で行われた山下達郎のコンサートで買ったカップ。
このコンサートには思い出があって、会社の後輩Sくんが女の子とデートしようとチケットを買ったんだけど、結局誘えずに、ぼくが一緒に行ったというもの。当時としても、デートで山下達郎はシブすぎる選択だと思ったよねえ。
これは、今年になって沖縄本島北部、やんばるへ行った時に買った物。生まれて初めて野生のヤンバルクイナを見た事もあって、ヤンバルクイナのカップです。
車を運転していたら、ヤンバルクイナが、道路をヒョコヒョコと歩いて渡っていました。因みに、ヤンバルクイナは飛べない鳥なんです。だから、道路をヒョコヒョコ渡っている時に、車に轢かれて死んでしまうものが少なくないそうです。
繁殖時期は春なのですが、今年の春はコロナ禍のステイホームで交通量も激減したために、雛が轢かれてしまう事故が少なかったようです。ヤンバルクイナの保護に携わる方が、少し安心したように教えてくれました。
沖縄で買ったカップの後ろに、北海道で買ったカップが並びます。なんだか楽しい。
最後に、赤毛のアンが牛になっているというシュールな絵柄のカップは、ツマが若き日にカナダでホームステイした時のものです。淵が欠けていますが、大切に使っているようです。
マグカップなどは、若い時に買った物を大切に使う方が、思い出も相まって価値が増すように思います。
若き日にマグカップを買わねば、老いての日に何を思いコーヒーを飲む。そんな風に思えてきました。
これからも、大切に使いたいカップたちでした。