南風通信

みなみかぜつうしん あちこち 風のように

ツバメの話


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うちのマンションの駐車場には、ツバメの巣がある。

春頃から親ツバメは雛に餌を運び始めた。親ツバメが餌を喰えてやって来ると、雛ツバメたちは「ヂュヂュヂュヂュヂュ!!!」と小さな身を乗り出して口を大きく開いていて「わたしにくれくれ!」と親に訴える。そんなにせがまれる親ツバメは、餌を口移しに与えると、素早く新しい餌を求めて飛んでいく。

 

雛ツバメの成長は思いの外早いのだ。巣の中で餌を求めて大合唱をしていた、あの小さなきょうだい達は、つい先日まで羽も生え揃わず身を寄せ合っていたのに、あっという間に親と見分けがつかない程に成長した。

 

その数日後、駐車場を歩く僕にぶつかりそうになった一羽がいた。慌てて反転してゆくそのツバメを目で追う。なんというか飛ぶのが下手なのだ。きっとこの間まで大合唱をしていた、あのきょうだいの中の一羽だろうと思う。

 

それから更にしばらくの時間が経った頃、巣の中から「ヂュヂュヂュヂュ!!」の大合唱が再び聞こえてきた。同じ巣の中に新しい雛が身を寄せ合っているのだ。同じペアが2度目の産卵をしたのか、新しいペアが空いていた巣にやってきて産卵したのか分からないが、ツバメの繁殖力はなかなかのようだ。

 

そんな風に、にわかツバメウオッチャーを楽しんでいるが、もう直にツバメたちは南方を目指して飛び立ってゆくらしい。あの小さなツバメが渡り鳥だということを、この齢まで知らなかった。

最近では、もう飛び立ってしまうのではないかとハラハラし、毎朝ツバメたちの姿を見ると、嬉しくてほっとしている。