桑田佳祐という人は、人間の心の機微がよく分かる人だろう。
桑田佳祐という人は、世の中の風音がよく聞こえる人だろう。
若い頃、サザンオールスターズの曲がとても好きだったのに、聴けなくなったのはいつ頃からだろう。
かつてのサザンは、稲村ケ崎や海の匂いがした。サザンの曲から海の匂いがしなくなって久しいように思う。
実は、もう随分昔から海を離れて、東京の路地裏や雑踏を歌った曲はあったのだ。「世に万葉の花が咲くなり」の頃がターニングポイントだったか。記憶は曖昧だ。
「栄光の男」は、裏寂れた路地裏の歌だ。桑田が歌う「おじさんフォーク」は、海と恋を歌うサザンとかけ離れているようでいて、いつものサザンオールスターズと同じように「心の機微のその奥」を突いてくる。
桑田佳祐は「愛すべき、ずるい人」だ。