南風通信

みなみかぜつうしん あちこち 風のように

美味しいは、順番がつけられない(私的 高知ラーメン事情)

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 <転勤族ラーメン派>

全国を転勤している楽しみの一つに、その土地土地の食べ物を発見する事があります。いわゆる郷土料理にはその地の歴史や風土が色濃く反映されています。

ところで、ラーメンという食べ物はスープ、麺、具材に多くのバリエーションがありますよね。それらの多様な個性的組み合わせとしての「ご当地ラーメン」は、その土地の雰囲気を彩る一つのピースのようになることもあるようです。

 

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徳島ラーメン 麺王/にんにくラーメン

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<高知ラーメン探求の旅>

 ここ高知県には、同じ四国のご当地ラーメンの雄「徳島ラーメン」のような、これぞ「高知ラーメン」というものはないようです。でも、この二年間ぶらぶらとラーメン店を訪問し続けて、高知ラーメンの形のようなものがぼんやりと見えてきました。

スープは薄めのしょう油スープ。麺はやや細めのストレート麺。具材は刻んだ葱にクラゲ、薄くスライスしたチャーシューと蒲鉾。これがぼんやりと見えてきた高知ラーメンの形です。このタイプの「高知ラーメン」の店には、必ずと言っていいほどバリエーションとしての「にんにくラーメン」があります。高知人は、にんにくが大好きです。にんにくは食べた後の匂いが気になるものですが、この地はにんにく臭に比較的おおらかです。カツオのタタキを食べる時にも、スライスしたにんにくが必須ですしね。

 

個人的に高知ラーメンの原形に近いと思われるのが、屋台のにんにくラーメンです。

 

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「高知市内の屋台 ボギー亭虎ちゃん/にんにくラーメン」

 

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「高知市の老舗店 川崎/にんにくラーメン」

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「土佐大正 お食事処 みたに /ラーメン」

 

上の3つは、ぼくが思う「高知ラーメン」のイメージに近いものです。地元の人に確認したわけではありませんが、あくまで私見です。

 

 

 <丁寧な仕事のラーメンたち>

高知市内に店を構える30代から40代前半の若い店主が作る、丁寧なラーメンは好ましいものです。共通しているのは、店主の「こだわり」と「研究熱心さ」のような気がします。こういう店は外れがありませんし、新しいメニューが出たりしますので、何度も通いたくなってしまいます。

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「鶏と魚/煮干ししょう油ラーメン」すっきりとした雑味のない美味さ

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「土州屋/台湾まぜそば」 土州屋は中華そばもうまいです。

 

 

 <ラーメンランキングは伊達じゃない>

先に、高知県にはいわゆる「高知ラーメン」がないと書きましたが、ご当地ラーメンはあります。高知県西部の須崎市の「鍋焼きラーメン」がそれです。

インターネットでラーメンランキングの高知県版などを検索すると、必ず上位にこの「鍋焼きラーメン」が入ってきます。

実は、ぼくはこの「鍋焼きラーメン」を少し冷ややかな目で見ていました。「鍋焼きラーメン」は、その名の通りアツアツの土鍋に入ったラーメンです。何故にラーメンを土鍋にいれるのだ!ラーメン原理主義的なぼくは、その見た目に強い違和感を抱くのです。更に中のラーメン自体も、透き通ったしょう油系のスープに、やたらと黄色いストレート麺。具材は葱に竹輪に落とし卵。正直、美味しそうに見えません。

 

先日、仕事で須崎市に行った際に「お客さんと話のタネに行ってみるか」と、鍋焼きラーメンの老舗有名店で、高知ラーメンランキングでも度々1位を取っている「橋本食堂」に向かいました。お昼時とはいえ平日ですし、高知市中心部からも高速道路で40分以上かかる田舎町(失礼)なので大丈夫だろう、と思っていましたが甘かった。既に行列で県外からのお客さんも結構います。店頭のおじさんの誘導で何とか車を止めていよいよ入店。カウンターに掛けてから、隣の常連らしきおじさんが食べているものと同じものをオーダーします。鍋焼きラーメン(並)550円に小ライス。

そしてやって来た鍋焼きラーメンがこちら。

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まずは透き通った黄金のスープを、レンゲですくい一口。

「むむむむむ・・・・」

ぼくの脳内を10文字くらいの「むむむ・・」が駆け抜けました。

鶏の出汁から取ったらスープには、「鳥の旨みってこうですよ」と訴えかけてくるかのような、強烈!!な旨み。

黄金スープの中で泳ぐやや硬めのストレート麺を、箸で一気に啜りこむ。

「うまし!」

土鍋の底には、硬めでしっかりと弾力のある鶏肉がゴロゴロと沈んでいます。その鶏肉は噛めば噛むほどに「いや、君はまだ鳥の旨みを知らないのだよ」と言わんばかりに主張してきます。滋味豊かなり。はあ。

隣の常連おじさんの真似をして、レンゲで掬った卵とスープを小ライスに投入します。鳥雑炊風のごはんは何杯でも行けそうで怖い。

「むむむむむ・・・・」

再び「むむむむ・・」という文字が15字ほど脳内を駆け抜けた時にぼくは思いました。

「悪かった。ぼくが悪かった。見た目だけで食わず嫌いどころか、正直ややバカにしていたぼくを許してほしい。鍋焼きラーメンよ、ごめんなさい」

皆さん、一言いっておきます。写真で見た感じの10倍旨いです。本当に。

ラーメンランキングもバカにできませんね。

 

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ちなみに、ゆるキャラGP2016優勝の「しんじょう君」は須崎市の出身で、頭に鍋焼きラーメンを乗せています。この写真では王冠のせいで見えにくいですが。