南風通信

みなみかぜつうしん あちこち 風のように

うどんリベンジ

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もう随分昔の事のようですが、今年のGWの10連休は妹たちを連れて香川県を訪れました。香川行きの目的はうどんです。それも「かまたまうどん」の発祥の店「山越うどん」さんに、どうしても連れて行きたかったのです。

山越うどんとの出会いは結構古くて、20年ほど前の事になります。当時勤務していた東京都内の職場に、同期入社のTくんが高松から転勤してきました。やがて東京生活に慣れた頃、彼は力を込めて主張するのです。

「東京のうどんは不味い」

「香川のうどんは死ぬほど美味い。そして安い」

職場に東京生まれの上司がいて最初は笑って聞いていましたが、度重なる強硬な彼の主張に、ある日、ややうんざりしつつ言いました。

「そんなに美味いなら香川まで食べに行ってやるから案内しろ」

そして、それに同調した者たち(お調子者たち)が同行する事になり、総勢7名が品川発の夜行列車に乗り込んだのでした。

その後、2泊3日の目くるめくうどん体験をする事になるのですが、詳細はここでは割愛します。でもその時、Tくんが香川うどんの実力を知らしめるために、満を持して、朝一番の1件目に皆を案内したのが「山越うどん」だったのです(その後4件のうどん店をハシゴしました)。香川県が「うどん県」と呼ばれる遥か昔の話です。

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GWの時は午前9時の開店前に完売

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残念な気持ちで行列を眺めました

 

 

ところで、うどんの話を書いていますが、今回の香川行きの本来の目的は、家人の高校時代の友人に会いに行くことでした。九州出身の同級生は縁あって香川県に家を買って住み着くことになったそうです。ぼくと家人の高知生活も3年近くなり、そろそろ異動もあり得るだろうという事で、会えるうちに会いに行きたいと言う家人の、付き添いドライバーとしてやって来たのでした。どうせ香川に行くならと、山越うどんのリベンジを主張したのはもちろんぼくでした。

 

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午前8時半に到着。高知からは高速で約2時間といったところです。この日も既に多くの人が並んでいましたが、9時開店のところを早めに開店してくれたそうで、行列もスムースに流れてました。

多くのお客さんの注文を1人で捌く女将さんの仕事ぶりに感心しながらオーダーを済ませます。もちろん「かまたまうどん」で決まりです。トレイに「かまたまうどん」を乗せて先に進むと、天ぷらなどの揚げ物コーナーが現れます。これがまた、たまらなく魅力的。ちくわ天とカニクリームコロッケを頂きます。

 

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1人で注文を捌く女将さんの仕事ぶりは見事

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「かまたま大」と、ちくわ天、カニクリームコロッケ

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う、ドーンと登場!会いたかったよ、うどんちゃん

 

 久し振りの元祖かまたまうどんを堪能しました。やっぱり美味い。うどんのコシも滑らかさも絶妙で、うどんそのものが美味いから生たまごを落としただけでこんなに美味いんですね。

敷地内にはお土産コーナーもあり、ここからお土産うどんを全国発送できます。九州の妹たちに、うどんと、かまたまのつゆのセットを送りました。

 

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うどんリベンジを果たした後、本来の目的である家人の同級生宅へ。とても素敵な日本家屋の一軒家にお邪魔させて頂き、おもてなしされました。約3時間、なんの脈絡もない会話が大いに盛り上がりました。初めて会った家人の同級生に「初対面でしたよね?」と笑われるほど打ち解けた雰囲気の、楽しい時間でした。

 

うどんリベンジに成功した我々でしたが「仕返しは倍返し」が通説ですよね?そこで、帰り間際には香川ご当地グルメの雄「一鶴」の「骨付き鳥」も頂きましたよ。何だか食べてばかりで反省です。でも、四国は美味いものが多いなあ。

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 どどどーんと登場。一鶴の骨付き鳥「ひな鳥」

東京日和

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高知龍馬空港の建物の中に坂本龍馬の像があるのは知っていたが、建物の外に吉田茂の像があるのは初めて知った。高知は本当に歴史的な人物を多く排出している。

 

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久し振りの東京出張である。高知は快晴だったけど、東京は雨模様。大きな荷物をコインロッカーに入れた際に、折り畳み傘を出すのを忘れてロックしてしまい、ビニール傘を買うハメになる。終日降ったり止んだり。

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仕事を終えて、ホテルにチェックインした後に新宿へ向かう。昔の会社の上司と西口近くの居酒屋で乾杯する。この方ともう随分長いことお付き合いさせて頂いている。いつも温和な笑顔で迎えてくれる。有り難い、嬉しいお酒になる。またお会いしたいですね、と別れる。奥さまにも宜しくお伝え下さいと。

新宿での楽しい時間を終えて、宿のある駅まで戻る。この宿は東京出張の度に使う慣れた宿だ。そのすぐ近くに街中華のお店があって、そこはとても美味しくて、このホテルに泊まる度にお邪魔する。1人二次会をビールと餃子で。ビール瓶のラベルに2020の文字を見る。アド街ック天国を見ながら餃子をつまむ。

 

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翌日、ホテルをチェックアウトしてから、駅前のカフェへ。窓際のカウンター席に大荷物で着席する。隣の若い男の子が自分の荷物を反対側に避けてくれる。引き締まった体つきのスマートな人だ。ブルーのインクの洒落た万年筆で、黒革の小さなバインダー手帳に何か書き付けては考え事をしている。アディダスの白いスニーカーには染み一つない。

東京の人は親切だと思う。特に利害関係のない人に対して。

 

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やがて反対側の席に老夫婦が座った。ご主人が奥さんに文句ばかりを言う。終始不機嫌なのだ。奥さんは腹を立てる事もなく、健気にご主人従っている。そういうバランスで支え合って生きていくという事もあるのだろう。

窓の外は、雨は止んだが灰色の雲が広がる。その下の道路を多くの人が行き交う。

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街の記憶10

RicohのコンパクトカメラGRの面白さに再びハマっている。今年に入って新型が出たのだけれど、無印のGRをまだ使っている。

28mm単焦点のレンズ固定という仕様は、写真を撮る者に負荷をかける。ズームの無いカメラなので(クロップはあるが使わない)距離感を合わせるためには人間が動かなければならないのだ。

広角28mmの画角で対象を切り取るには、頭を使って考え、足を使って動かなければならない。そうでないと何を撮ったのか分からない写真ばかりになってしまう。

シャツのポケットに収まってしまうサイズのカメラを持って街に出て、ひたすらにシャッターを切り続けると、やがて頭と体が28mm単焦点の仕様になってくる。そうなのだ、GRはカメラのくせに、人間を矯正して自らに従わせてしまうのだ。もう、こうなってしまうと、GRでなければ駄目な体になっているはずだ。これで、立派なGRistが誕生しているはず。写真の腕前までは知らないけどね。

 

 

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高知のもう一つのご当地ラーメン

ご当地ラーメンというものがありますね。

古くからあるのは、九州のとんこつラーメンや、札幌の味噌ラーメンなんかが思い出されます。東京のラーメンはしょう油スープの中華そばだったりとか、その程度の大まかな分類でおおらかな時代がありました。

今では、さまざまなご当地ラーメンが登場していて、新興のご当地ラーメンが今では全国区になっているものもあるようです。

 

一方で大多数のご当地ラーメンは、全国区にはならずにあくまでご当地ラーメンとして地元の人たちに愛されているようです。そうしたラーメンは正しく「ご当地」に行かなければ食べられない、贅沢な一品だと思うのです。

 

高知のご当地ラーメンとして、以前ご紹介したのが須崎市の鍋焼きラーメンですが、今日はもう一つの高知のご当地ラーメンの事を書きたいと思います。

 

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今回書きたいのは、インスタが登場するずっと前から「映えて」いたという、高知の「味噌カツラーメン」です。トンカツを乗せれば「映える」の法則はカツカレーで広く知られますが、その法則をラーメンに転用したものです。ご飯ものにカツを乗せるのは何となく容易そうですが、汁物にトンカツはどうなんでしょう。第一印象はそう思いましたよ。

 

 まず最初は「自由軒 伊野出来地店」の味噌カツラーメンです。

 

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「自由軒」は高知県内に数店ありますが、どのお店でも味噌カツラーメンは人気のようです。地元の方によると、数年前に「秘密のケンミンショー」で自由軒の味噌カツラーメンが紹介されたそうです。

高知の味噌カツラーメンを初めて食べたのは「自由軒」だったので、ぼくの中でこのお店が基準になる味です。あっさり目の味噌スープに大きめのトンカツかドーンと一枚、その下に控えているチャーシューも肉厚で美味いのです。カツは衣がしっかりとしていて、スープに負けて溶けてしまうことがありませんでした。

「自由軒」はラーメン屋さんではありません。定食類も豊富に揃った食堂です。でも客はラーメンを楽しみに来る人が多いようですね。家族連れも多くて、お休みの日に家族で外食という時にも良さそうな、安心感のあるお店です。ラーメンは塩やしょう油のスープのものもあります。おでんもあったりして、ちょっと嬉しい食のワンダーランドです。

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二件目は「鈴木食堂」の味噌カツラーメンです。ここの味噌カツラーメンは少し上質な感じがします。トンカツはロースカツを注文が入ってから揚げています。スープの味噌は香りがよくて味も深いです。そして中太のちぢれ麺がスープによく合います。これは西山製麺から取り寄せているというものですが、このお店の店主が北海道出身だそうで納得です。本棚にマンガが並んでいるラーメン屋は美味い店が多い、と勝手に思っているのですが、鈴木食堂もそういったお店です。ボロボロになった北斗の拳を読みながら、味噌カツラーメンを美味しく頂きました。

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 最後は「豚太郎 上町店」の味噌カツラーメンです。地元の人が言うには、この「豚太郎」が高知の味噌カツラーメン発祥のお店だそうです。なんでも元々あったメニューではなくて、お客さんがトンカツとラーメンを別々にオーダーして勝手にラーメンに乗っけて食べていたものを、後にメニュー化したそうです。

豚太郎は高知市内に数店舗あるのですが、お店によって味が違うそうです。「ここの豚太郎がすき」という声が多い上町店に行ってみました。元祖味噌カツラーメンは、お客さんのアイディアで生まれたというエピソードを思わせるシンプルな味です。気楽に食べられる街中の味噌カツラーメンといった感じでした。

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高知市内の友人に聞くと、須崎の鍋焼きラーメンよりも豚太郎の味噌カツラーメンの方が「身近」だそうです。高知は東西に長く広いですからね。

 

全国区になれないご当地ラーメンはどこかB級グルメの感じが漂います。だけれどもB級を極めていった店主たちの努力が、その土地に愛される本当の「ご当地ラーメン」を生んだのだろうと思うのです。

高知の味噌カツラーメン、ご馳走様でした。

 

 

 

高知で二番目に好きな店

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こんにちわ。

良いお酒飲んでますか?

前回の記事で一人飲みの気楽さについて書きました。そして、一人飲みでしばしば訪れるお店「関羽」について書きました。

さて、今回ですが、一番があれば二番があるという事で、一人飲みにぴったりなお店をもう一軒ご紹介する事となります。

 

「日本で一番高い山は富士山だという事は誰でも知っているけど、日本で二番目に高い山は誰も知らない。だから一番を目指さなければ意味がないのだ」

きっとどこかで聞いたことがあるフレーズです。でもね、二番でも三番でも知る人ぞ知るですし、結婚するなら二番目に好きな人っていうじゃないですか。あ、決して民主党時代の蓮舫議員の発言を擁護するつもりではありませんので、誤解なきように願いますね。ともあれ、二番手には二番手の味があるものです。ここでは二番目と書いていますが、本当は「関羽」と甲乙つけがたいお店なのです。

 

「葉牡丹」は、高知市の中心街にある中央公園の真向かいにある居酒屋です。小さなブリキのおもちゃのような、とさでんの路面電車が店の前を、始終行き来しています。

 このお店の開店時間は午前11時からです。ランチメニューもありますが、やはり昼間でもお酒好きがカウンターを埋めているようです。

 

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この日は夕方の早い時間から一人飲みを楽しみました。外はまだ明るい時間ですが、カウンターは既にいい具合に仕上がった酔客で満席です。この店でカウンターについて最初のオーダーは決まっています。生ビールとフライの盛合わせです。エビ、豚、魚介、いか、野菜の串フライを合わせた「フライ盛」は、その場で揚げたての熱々です。それでいてお値段は287円。有難い。

熱々のフライを、火傷しないように運び一口。その後、冷え冷えの生ビールで口内を急速冷却。あちあちひえひえを繰り返し楽しみます。

 

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創業当時から変わらないというフライ盛。

 

 

カウンターの端っこにはTVモニターが掛けてあって、大相撲をやっています。この日の千秋楽は特別なものです。アメリカの大統領が升席で観戦するというのです。前日には、三役未経験の平幕力士が初優勝をしたという事で盛り上がった国技館でしたが、この日はまた違った盛り上がりを見せています。カウンターの酔客たちも興味津々でモニター眺めながら酒を飲んでいます。

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 アメリカ大統領が土俵に上がり、優勝力士に大統領杯を渡すというシーンに酔客たちの目線が集まります。

「土俵の上に靴であがっとる!」

「そりゃーいかんわ。日本の文化を侮辱しとる」

酔客たちの憤った声が聞こえます。ぼくも少し酔った目で画面を眺めていましたが、トランプさんはスリッパを履いていたような・・・。

憤った酔客たちは、先ほどの光景も忘れたようで、また自分たちの酔いどれ会話に戻っていきました。

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 こちらも有難い。ホルモン煮込み173円。

 

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生ビールが空いた頃、隣に座っていたスポーツマン風の紳士が声を掛けてきました。

「高知の方ですか?」

転勤族だと答えたところから、この隣り合わせた男性との酔いどれ話が転がり始めました。

生ビールの次に、土佐鶴の冷やをお願いしようと、カウンター向こうにおねえさんに声を掛けます。

隣のスポーツマン紳士が言う。

「土佐鶴も良いですけど、桂月も美味いですよ」

その言葉に従って、ぼくはおねえさんにお願いして、土佐鶴を桂月に変更してもらいます。

桂月をコップで飲みながら、つらつらと話が続きます。この人は元高校球児で、高知の高校野球の名門、高知商業野球部のOBでした。

「息子がサッカーに夢中で野球をやってくれない」と苦笑いしていました。

葉牡丹は、カウンターで隣り合った縁での酔い話が起こりやすいお店なのです。

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高知の名物「沖うるめの焼き物」

 

30分ほど気持ちの良い無駄話をした後、そろそろ〆に入ります。ここは葉牡丹の〆の一品は、断固、土佐巻きとしたい。

土佐巻きは、カツオのタタキをスライスした生にんにくと一緒に巻き寿司にしたもので、ぼくは葉牡丹の土佐巻きが大好きです。一人前の半分「ハーフ」をここで食べる事にして、別に一人前をお持ち帰りにします。家人も葉牡丹の土佐巻きが大好きなのです。

入店から一時間程で店を出ました。店の外はまだ十分に明るくて、まだこれから飲み始める人も多そうです。心地よい酔い味での家路となったのでした。

 

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これぞ葉牡丹の土佐巻きハーフ。

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土佐巻きお持ち帰り。箸袋と包装紙のデザインが素晴らしいのです。

 

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高知で一番好きな店

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ひとりでふらりと飲みに行く事がありますか?

平成の終わり、令和の始まりの世の中で、一人飲みは世間的にはどういう風に捉えられているんでしょうね。

若い人たちがお酒を飲まなくなったという記事も何処かで読んだような気がします。そんな時代に。

 

「何だか寂しそう」

「大勢で飲んだ方が楽しい」

「一人で飲みだしたらヤバイ。依存症?」

 

あまりポジティブな印象が浮かんできません。

世間ではどう思われていても、それはそれとしつつ、敢えて言い切りたいのです。

「一人飲みは心地良い」

 

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関羽の看板メニュー「ゆでタン」

 

そう、一人飲みは、楽しいでも嬉しいでも美味しいでもなく「心地よい」のです。

最近は飲み会に参加するよりも、この一人飲みの方が多いくらいです。

一人飲みの良さには、色々な要素があるだろうと思うのですが、その中でも一番の良さは「気楽さ」だろうと思います。

 

仕事帰り、「ちょっとだけ飲みたいな」という時に、家路へ向かう足を方向転換して、馴染みのお店の戸を引いてみる。

中を覗き込んで、カウンターが空いてればしめたもの。カウンターに空きがなければまたの機会にしましょうか、となる。これもまた良しとしましょう。

 

一人飲みは、始まりがこんな感じだから終わりもまた気楽なものです。

「今日はいつもよりも酔うな」そんな時には、もう一杯を留めて席を立つ。心地よい酔い味だけが残ります。

常連さんや一見さんと、会話が始まる時もあります。でもこれは店によりけりだな。カウンターで肩寄せ合う縁に始まる無駄話が、起こりやすい店と起こりにくい店があるようです。ここ「関羽」は、無駄話が起こりにくい店だと思う。カウンターの一人客は、それぞれに美味い串焼を味わい、酒の酔いを楽しんでいるようです。

 

高知市中心街の帯屋町アーケードにある、リッチモンドホテルの入り口脇の人気のない通路を進んで行くと、その先の路地が「おびや町小路」です。

隠れた名店の並ぶこの目立たない路地に「医食同源の店 関羽」はあります。このお店こそ、ぼくが高知で一番好きな飲み屋さんです。

 

ここの大将は、店を一人で切り盛りしています。ですから、空いたお皿の片づけやビールの追加などは、心得た客達が自分でやってしまいます。その間も大将は黙って炭火台の前に立って串を焼いています。それが当たり前の光景。

 

ぼくが店に入ると、カウンターに前の客の使った皿が残っていました。自分で皿を重ねて上に片づけ、布巾でカウンターを綺麗に拭き上げます。そして、ようやく椅子に腰を降ろすと、左右の客からおしぼりとオーダー表がすっと無言で差し出される。そんなお店なのです。

 

「ここはサムライの店やき」という声が聞こえました。この店の常連らしき、おじさんグループです。会話の内容から武道系に方々のようです。警察関係の方かな?無骨な大将と無骨な客のお店なのです。

 

夏場には店の引き戸は開け放たれています。この店には冷房も、扇風機さえもありません。客たちはカウンターに無造作に置かれている団扇を片手にいビールを飲んでいます。こんな時には炭火台の前の席には座ってはいけません。そこはちょっとしたサウナ風呂くらいの温度にはなっているでしょう。それでも満席なのが関羽なのです。

 

いつだったか時間が経って客が落ち着いてきた時に、大将が焼き場を抜け出して、店の外で座り込んで夜風に当たっていた事がありました。

声を掛けると「熱いからねえ、本当、堪える」とぼくを見上げて言いました。

 それからしばらくしてからでしょうか。大将と息子さんが一緒に焼き場に立つようになり、その機会は少しづつ増えているように思います。でも、サムライの店の大将と息子さんの間に会話はほとんどありません。

 

ぼくの一番好きなお店は、土佐人に長く愛されるお店です。大将にはいつまでもお元気で頑張って頂きたい。そう思う人は、ここ高知にかなり多いと思うのです。

 

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関羽の串焼き。レバーとナンコツ(この日はナンコツが出過ぎてニセミノを挟んでいます)

 

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高麗人参と漢方生薬に付け込んだ「人参酒」

 

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赤牛のタタキ

 

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赤牛のハツステーキ

 

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風貌が独特で、一度見たら忘れられない大将

 

 

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