南風通信

あちこち 風のように

在台灣轉來轉去旅行⑤(たいわん うろうろ たび)

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 【2018.8.20】③

<雨上がりの葱油餅>

夏の台湾を旅行するにはサンダルを履いて行け、と何かで読んだと事がある。永康街を抜けてカメラのシャッターを切りながら周辺を散策していると、雨粒が落ちてきた。短い時間に強くなった雨は、点々と路面を暗く染めていって、そこここに小さな水たまりをつくっていく。そういえば折り畳み傘も持って行け、と書いてあったけど、こちらの方は忘れていた。永康街を東門駅の方へ戻る途中、目に付いたカフェで雨宿りをすることにした。

ところで、夏の台北市内を歩いているとホットパンツ姿の若い女の子を見かける事が多い。これは流行もあるのかもしれないけど、やっぱり単純に暑いからだろうなあ、と思う。それに急な雨が降っても裾が濡れないしね。

  

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Together cafeの大きめのカップのコーヒーをゆっくりと飲みながら、ガイドブックを覗き込んでの作戦会議をするくらいの時間で、雨は小雨になった。雨のお陰で気温も少し下がったようだし、出発しよう。食いしん坊のぼくらには、永康街を離れる前に寄っておかなければならない場所があるのだ。

それは屋台なのだけど、永康街を歩いたことがある人なら、いつも行列が出来ている葱油餅(ツォンヨービン)のお店と言えばピンとくるだろうと思う。その屋台「天津葱油餅」には今日も人だかりが出来ていた。雨は弱くなったけど、まだ、パラパラと小さな雨粒が降っているのにである。 

ここでハムと卵入りの葱油餅をオーダーする。客は皆、葱油餅を買うと、建物の軒下で雨を避けながら食べている。ぼくらもそれに倣って軒下で熱々の葱油餅を早速頂いた。永康街ではこれを必ず食べる事になっていて、お腹の余裕具合に関わらず、いつ食べても美味い。葱油餅はぼくらにとって、台北に来ている事を実感させてくれる食べ物の一つなのだ。

 

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 <足裏マッサージの死闘>

午後遅くには、いつもお世話になっている足裏マッサージの店で疲れを癒してもらう。MRT行天宮駅の近くにある、「活泉足體養身世界」のオーナーは日本人なのだけど、黒い直毛の長い髪をサイドに流し、色の入った眼鏡をかけている細身の男性で、その風貌はジャッキーチェンの香港時代の映画に出てくる東洋人を思い起こさせる。今回、マッサージを担当してくれた女性は50歳過ぎらしい小柄なおばちゃんだったけど、足のツボを押す指の力は極めて強く、ぼくは顔いっぱいに脂汗を浮かべてその痛みを耐えていた。ぼくがあんまり汗をかくので、途中でおばちゃんはマッサージの手を止めて、エアコンの温度を下げに行ったほどだ。同じフロアで施術をしていたマッサージ師たちがぼくの方を見て微笑んでいる。「マダ、アツイデスカ?」おばちゃんがそう言うので「ア、ダイジョウブデス」と、何故かおばちゃんと同じようなギコチナイ日本語で応える。いやいや、暑いんじゃなくて脂汗だよ、と心の中でツッコミを入れたが、日本男児の心意気で何も言わずに、涼しい顔で痛みに耐える事にした。汗だくの涼しい顔で。

  

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<蝦釣堀熱闘編>

毎回、台湾旅行の旅程は家人が念入りな情報収集を経て決定する事が、我が家の不文律となっている。そこに、ぼくの主張が入り込むことに成功するのは極めて稀である。しかし、今回の旅行を前にぼくは徹底抗戦の構えをもって主張を貫いた。

「エビ釣り堀に行きたいのです」

ぼくが台湾のエビ釣り堀のことを知ったのは、もう20年近く前の事だと思う。趣味でやっているバス釣りの専門誌「ロッド&リール」に、台湾釣行記が載っていて、そこでこのエビ釣り堀の事が出ていたのだ。海外まで釣りに行く記事を載せるなんて、あの頃のバス釣り業界はまだ景気が良かったんだなあ、と懐かしく思う。バス釣り業界は、その後の曲折を経て今に至るが、台湾釣行記を特集した「ロッド&リール」は今年休刊となってしまった。寂しく思う。

話を戻す。ぼくと家人がエビ釣り堀に着いたのは夜の8時くらいだった。家人はやはり、あまり乗り気ではないのだけれど、足裏マッサージで足取りが軽やかになったぼくは、スタスタと中に入っていった。

 

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薄暗い店内には、コンクリートの大きな水槽が据えてあって、その水槽をぐるりと囲むように客が座っている。そして、各々が細長い釣竿を水面に向かって突き出しながら、その竿先から垂れるに糸に付けたウキを見つめている。

家人は「私は見てるから」と、既に当面の消極的な方針を表明している。ぼくは、受付の男にお金を払い、レンタルの釣竿セットと餌を受け取る。料金は1時間で300元だというので、日本円でだいたい1100円くらいだろうか。

店内を改めてぐるりと見渡すと、客は観光客と地元の若者と半々くらいに見える。すぐそばのテーブルにたむろしているモヒカン風の男のグループは、地元の若者たちだろう。フロアーの奥の方から日本語も聞こえてくる。彼氏に連れられてきた若い女の子の客もいるようだ。

ぼくと家人は、客の並ぶ水槽と壁に挟まれた狭い通路を奥へ進み、自分たちの釣座を定めて座った。ぼくらの正面から角を経てこちらまでの団体客は日本人だった。その男女7、8人のグループは、大きな声で嬌声を上げながらエビ釣りを楽しんでいる。

小さくて繊細な針に、白い小エビの餌をつける。エビで鯛を釣るにはあらず、エビでエビを釣るのがここの流儀らしい。ぼくは第一投目を水中に入れる。ポンプで空気がブクブクと湧いていて、そのせいで水に流れが生じる。水面に浮くウキはその流れに乗ってゆらゆらと流れてゆく。すると、ウキの流れが止まり、水中に引き込まれた。合わせを入れると、竿から伸びる糸の先の水面下で、確かな生命力が必死の抵抗を試みている。針にかかったエビは結構引くのだ。

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抵抗空しく釣り上げられたエビは、ぼくの手の中に納まった。何だかんだで家人も楽しそうだ。すると、隣に座っていた日本人の男が話しかけてきた。

「座ってから釣るのが早いですねー」

「ええ、あ、まあ」

ぼくはフレンドリーなその男に、曖昧な返事をする。釣りに集中し過ぎていて答えが咄嗟に浮かばなかったのだ。

バス釣りを20年以上やっているが、釣りはどんな釣りでも通じるところがあるようだ。

その後は、そのフレンドリーくんと会話を交わしながら釣りを続ける。

彼らは広島から来たらしく、そのメンバーは皆、職場の仲間で、社員旅行なのだとか。会話の途中で彼のウキが水中に沈み横に移動していく。ぼくはそれを見ながら、水中で針をくわえたエビが水底を急ぎ足に歩いていく様子を想像する。彼はまだ合わせずに、じっくり送り込んでいる。エビが付いている事を確信し、ウキの動きを見ながらタイミングをはかっているのだ。隣でぼくはジリジリとする。

「うわあ、あれぇーー」

ようやく合わせを入れたフレンドリーくんの竿は、スカッという感じで空を切った。その先にエビはもういなかった。

「今、エビが食ってたんだよー。絶対食ってたんやけどなあ」

フレンドリーくんは仲間たちに向かって言う。

「本当かあ?気のせいじゃねーかー」「へたくそー。わははは」

一同がまた盛り上がる。

その後、ぼくとフレンドリーくんは一匹づつのエビを釣った。

そして、やがて、フレンドリーくんのグループは満足そうに帰って行った。

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日本人の団体客がいなくなり、周囲が静かになる。ぼくはまた、釣りに集中する。ふと気が付くとぼくの隣に地元の若い男が座って竿を構えている。さっき入口付近のテーブルに居たモヒカン男のグループに居た青年だ。周囲を見渡すとモヒカン男も釣り竿を構えて真剣な表情を浮かべている。彼らはどうやらここの常連らしい。彼らの使っている竿や仕掛けは、ぼくが使っているレンタルのものとは、少し違っていた。きっと各々「マイ釣竿」を持ち込んでいるのだろう。竿を高く構え、ウキが吸い込まれた時の合わせは、鋭く無駄がない。

ぼくの隣の髪の長い男は、整った顔にひょろりとした体つきで、ボーダーのシャツが少し大きく見えた。昔、麻雀に憑りつかれて学校に来なくなり、留年を繰り返した大学の先輩がいたが、その先輩に似ていた。インテリ崩れの匂いのするそのボーダーシャツの男は、缶ビールを飲みながら釣っている。台北ではお酒を飲む人をあまり見かけないのだけれど、彼は美味そうに台湾ビールを飲んでいた。

ボーダー男が、高い構えから鋭く合わせを入れると、だいたいエビが釣れた。かなりの使い手なのだ。エビが釣れると仲間たちと大きな声の台湾語でやり取りする。

「今日は食いがシブいよ」

なんて言ってるのだろと思う。言葉が全く分からないけど。

 

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ぼくは1時間をかけて計4匹のエビを釣り上げた。数回のバラシが無ければ、もっと釣れたはずだけど、まあ良しとしよう。

この釣堀では、少しのお金を払えば釣ったばかりのエビを調理して食べさせてくれる。ぼくらはもちろん食べる事にする。ぷりぷりのエビを頬張った時には、さすがに家人も嬉しそうだった。

九時を回る頃には、店内はほぼ常連のみになっていった。彼らの釣りを眺めながら、まあ、健全な遊びだなと思う。ボーダーシャツが独特の構えで右手に竿を持ち、左手で缶ビールを飲んでいる。観光客のいなくなった店内で、彼らの長い夜はこれから始まりそうだった。

 

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 つづく