
酒を飲みながらする話の話題としては、とにかくどうでも良いものがよい。
いつだったか仕事仲間と二人で飲んでいるときに、「ビールのつまみに一番合うのはなにか」という事を、かなり真剣に(酔っていての事だけど)話したことがある。
互いにこれぞと思うつまみを一品ずつあげて、勝ち抜き戦のように勝敗をつけていく。
たとえば「ポテトフライ」と「からあげ」が出揃った時には、二人して「うーん、これはからあげだよね」という風に勝敗が決まっていく。敗れた側は新たに一品を出していく。「そうだなあ、じゃあポテトサラダでどうだ」と、ポテト好きの相手は言ったりする。
そんな具合に勝ち抜き戦は進んでいき、「川海老のからあげ」「もろきゅう」「焼き鳥」「しおから」「ポテトチップス」「冷や奴」が敗れ去っていった。そして、勝負も大詰めのこの時に残ったのは「餃子」と「だだちゃ豆」の二強であった。双方手札を出し切った感もあり、これが決勝戦という雰囲気になっていた。
「これはだだちゃ豆だね」「うん、そうだね」。
最後は意見の一致をみて、激闘の末であったが、勝負はあっさりとついてしまった。
そこで二人は、ぐびりと、もう何杯目かの冷え冷えのビールを飲む。この日の居酒屋には「だだちゃ豆」は無く、随分前に敗退した「ポテトフライ」を食べながらである。
良い気分になってきたおじさん二人は、次の対決ネタを思いつく。
それは「妙齢の女性に言われて嬉しい台詞はなにか」
アルコールで頭の緩くなったおじさん二人はここで考え込んだ。少々酔っ払っていても(酔っているからこそ)このテーマは真剣に考えたいものなのだ。
「素敵ですね」
「かっこいいですね」
「渋いですね」
「すきです」
おじさん達二人は、普段あまり言われない言葉を思いつくままに並べるが、なんかしっくりこない。
二人とも考え込んだ後に、飲み友だちが言った。
「うそつき・・って言われたい」
「うそつき・・」魅惑の言葉だ。
遠い過去に言われたような、言われないような。現在で言われたらなかなか問題がありそうな心を揺さぶる言葉「うそつき・・」
二人して緩んだ頭で、何かを思い出すような想像するそうな顔をしつつ、またビールをぐびりと飲むのであった。