
もう20年も前からラーメン一杯400円を、頑なになのかどうかは知らないが、ずっと同じ値段でやっているラーメン屋さんがある。
僕が初めて食べたのが20年前だったので、一杯400円はその前からずっと続いているのかもしれない。
大将と奥さんの二人でやっているのもずっと変わらず、お二人とも全く歳を取られないように見た目が変わらない。
ずっとこのお店は変わらない。時間の流れの外にあるように。
そのせいか、かつてこのお店でよく顔を見た男の事を思い出した。彼の兄は僕と同級で、中学時代は同じサッカー部だった。あの兄弟は見た目も性格も正反対だったなと思う。
兄は甘いマスクで足が早く、サッカーが上手かった。弟は豪傑のような風貌で決してスマートとは言えなかった。
その弟とこのラーメン屋でよく会ったものだ。もう20年近く前の事か。会うと大きな声を掛けてきて、簡単な近況を話した。けれど、いつも、今度、飯にでも行こうなという話にはならなかった。きっと兄貴の同級だから、少しは遠慮があったのだろう。
その彼が急に亡くなってから、もう随分の時が経つ。父親も彼らが小さい頃に急逝していたので、お葬式の喪主は同級である兄がやった。サッカー部の同級生が力が抜けたように祭壇の脇の椅子に掛けていたのを覚えている。その横で夫を亡くした奥さんとまだ小さな子供が涙を流していた。
ラーメン屋さんを後にする。この辺りは子供の頃に住んでいた家に近い。通りに出ると、中学時代にはもうすっかりおじさんの様な顔をしていたMくんの家が見える。古いけど木造の立派な二階建ての家だ。彼は長男だったはず。今もこの家に住んでいるのだろうか。
並びの酒屋さんも随分長いことやっている。高校生の時に悪友と二人で缶ビールを買って、近くの河原の土手でよく飲んだっけ。この酒屋には綺麗な姉妹がいて歳は僕らより1つが2つ上だった。悪友と、姉と妹のどっちがタイプだ?と言い合ったりした。
この辺りの景色には、思い出が沢山結びついている。ちょっと油断すると、思い出の森の中に迷い込んでしまいそうになる。