昨年からカクテルにハマっている。
長く色々なお酒を飲んできたが、ここに至ってカクテルにたどり着くとは自分でも意外だと思う。
キリンラガー、スーパードライ、スーパーイースト、モルツ、サッポロ赤星などなどの国産ビールたち。はたまた伊佐美、森伊蔵、魔王などの芋焼酎の群れ。そういったお酒と渡り合ってきたが、近年はアイラモルトのウイスキーが一番良いと思うようになった。そもそもオーセンティックなバーに通うようになったのは、このアイラモルトウイスキーを美味しく頂くためだった。
そうやってバーに通う中で、ただウイスキーを飲むだけではバーテンダーさんに失礼なんじゃないかと思うようになった。メニューには沢山のカルテルが記されている。そしておいしいカルテルを作るのには高い技術と経験が必要だということも理解していた。
オーセンティックバーにやって来て、ウイスキーばかり飲んでいるのは、寿司屋の名店でお刺身ばかり食べているようなものではないか。そう思うようになった。
カクテルを飲むようになって、改めて思うのは店によってバーテンダーさんによって同じカクテルでも味や飲み口が違うということだ。
週末のこの日、お客さまの酒席にお呼ばれした後、散会後に一人でお気に入りのバーに落ち着いた。カウンターはほぼ満席だ。いつものジェントルなマスターは忙しそうにされている。
カウンターの酔客たちの会話が聞こえてくる。この会話を聞くともなしに聞きながら、美味いカクテルを飲むのはオツなものだ。「ワタシ全然恋愛体質じゃないからー」と若い女性の甘えたような声が聞こえる。隣には4〜50歳の男。この日の客はちょっとはしゃぎ過ぎだと苦笑する。
毎日が厳しい暑さのこの頃、身体に熱がこもったまま抜けきれないような感じがする。この夜の1杯目はシーサイドと洒落てみる。メニューから見つけた名前なだけで、このお酒がどんなカクテルだか知らない。ぼくは全くカクテルには詳しくないのだ。果たして現れたのは透き通る海の様なブルーのカクテル。
街なかで海岸線にたどり着いたような気分になり、心地よい酔いに身を任せてしばらく過ごした。酔客たちもそれぞれに時間を過ごしている。