南風通信

みなみかぜつうしん あちこち 風のように

蘇生

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若い頃から革製品が好きだ。

だけど、普段遣いにするには、とても手がかかる。雨に弱いし、傷が入りやすいし、メンテナンスも定期的にやらなければならない。

 

ここまで書いて、ふと、気がついたのだけれど、最近のぼくは手のかかるものばかりを好んで使っているようだ。

 

例えば、冬の暖房器具は石油ストーブを使っている。円筒型のシンプルなやつで、普段から火を灯す「しん」の手入れをこまめにやっている。丁度、今の時期からはストーブを仕舞う作業が必要になる。燃焼部の部品を取り外して、重曹を溶かしたぬるま湯で丁寧に洗う。こびり付いたタールなどは、ちょっと撫でたくらいでは取れない頑固者だ。面倒だけど、この作業をきちんとやっておかないと、来シーズン寒くなってきた頃に後悔することになるのだ。

 

あと、ダイニングチェアも半年毎にメンテナンスをしている。ぬるま湯に石鹸を溶かして泡で洗ってやるのだ。乾いた石鹸の膜を纏った木のチェアは、薄化粧の女性のようで、どこか愛らしい。

 

話を戻すが、革製品である。

革製品もメンテナンスをするとしないとでは、長年使用した後の表情が変わってくる。愛情をもってメンテナンスしながら使ってあげると、寡黙だけれど存在感のある、良い佇まいになってくるのだ。これは新品には無いもので、革製品は手入れをしながら使ってなんぼだと思う。

 

愛用している財布や手帳カバーも小まめにメンテナンスしている。シンプルでしっかりとした作りのものは、簡単には型崩れしないし、壊れたりもしない。

 

先日、メルカリで大好きなアンリークイールの製品を見つけた。サコシュのようなショルダーバッグだ。値段が破格に安かったので購入したのだが、バッグが届いてみるとちょっと可哀想な状態だった。

 

革が乾燥して紙のようにパサパサになっていたし、粉が吹いたのかカビなのか全体的に白っぽくくすんで色褪せていた。PC画面ではよく分からなかったが、これでは値段も安いはずだ。

クリームを塗ってみたり、オイルを塗り込んでみたりしたら、少し革が息を吹き返した。でも、くたびれた感じは拭えない。ビンテージだと言えば聞こえが良いが、ビンテージになるほど古いものでもなかった。

 

インターネットで色々と調べてみたら、革製品のクリーニングや補修をしている業者さんが、そこそこあることが分かった。その中から福岡の業者さんを選び、見積もりを依頼したのが一ヶ月ほど前。その後、補修を依頼したものが、今週帰ってきた。

 

ちょっと見違えるようになって帰ってきたそのバッグは、余所行きの顔をして緊張しているかのような佇まいだった。

 

この生き返ったバッグをメンテナンスしながら、大事に使って行きたいとおもう。どんな表情になってゆくのだろう。とても楽しみなのである。