南風通信

みなみかぜつうしん あちこち 風のように

ささやかな宴

 

 今年退職した会社の仲間3人で集まってお酒を飲んだ。

5月に退職した僕と、8月一杯で退職する男が一緒に食事をする事になった。もう一人の女性はまだ現役で頑張っている。

 

 僕が転勤で大分を離れる時に、彼女や気心の知れた数人の仲間で飲んだお店で再会することになった。その時から、もう7年が過ぎていることが信じられないような気がしたが、男二人は会社を離れることになっているし、一人残っている彼女も職系が変わっていて働き方が変わっていた。やはり時は流れているのだ。

 

 若い時にずっと年上の先輩たちから「40を過ぎたらあっという間に50になる。50を過ぎたら気がついたら60になっている」と言われたことがあった。まだ60までには間があるが、先輩たちが駆け抜けていった年代を僕らは過ごしている。

 

 昨年入院して以降、お酒に弱くなったような気がしているのだが、この夜はお酒が進み楽しく飲んだ。カワハギの刺身で薬味を巻いて、肝を溶いた醤油をつけて食べる。これがとても日本酒に合うのだ。3人のなかで一番の酒豪である彼女がどんどんお酒を追加していまい、結構飲むことになった。とても美味しい日本酒だったが、銘柄名を覚えていないのは少し飲み過ぎたせいだ。

 

 2件目のスナックでコロナ禍が始まって以来のカラオケを歌い、おじさんおばさんたちはすっかりご機嫌なのだった。10時前には彼女のろれつが怪しくなり目をこすり始めたので、そこでお開きとした。おじさん二人はまだいけそうだったが、ここで潮時を誤らないのが成長したということか。二人で彼女をタクシーに乗せて家へ向けて送り出し、また定期的に3人で会おうということを約束して帰路についた。

 

 ここまで書いてみても、なんでもない出来事なんだけれど、気の合う仲間がいて一緒に食事をする事が、以前にもまして嬉しい事になってきている。僕らはそういう年代を生きているんだ。昔、あの話してくれた先輩たちも、きっとこんな気持ちを味わったのだろう。そう思いながらタクシーの窓外に流れる夜の街を眺めた。