南風通信

みなみかぜつうしん あちこち 風のように

提灯の誘惑

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子供の頃の父親の教育方針が、「知力よりも体力と根性が大事」といったものだったようで、運動ばかりやっていた少年時代だった。そういった事もあって、社会人になってからも健康と体力には自信があった。

 

ところが、ここ数年の健康診断で、血糖値が基準値の上限を少し超えたところで推移している。職場でそんな話になった時に、「ふくたろうさんは、ぜんぜん太ってないじゃないですかー」などと若い女子社員に言われたりして、その気になって生活態度を改めずにいたせいで、相変わらず血糖値はちょっとよろしくないのだ。

 

それに、昨年入院したこともあって、ようやく生活態度を改める事を考えるようになった。お酒を飲まなくなって、もう1年3ヶ月が過ぎたし、退院後は炭水化物を控えるようになった。それなのにだ、体重は減ることなく、ちょっと油断すると増えようとする。

「お酒をやめて体重が減りました」なんていう声をよく聞くけど、ぼくはぜんぜんなのですよ。

 

そこで、最近は一日一食に挑戦している。これで体重をある程度落としたら、また、三食に戻そうという目論見だ。更に、退院後中止していたランニングを復活した。無理がいかないように、体の声を聞きながら、ジョギングとウオーキングの中間くらいのペースでやっている。取り敢えずは。

 

それで夜になると、週に三日から四日くらいは走っているわけだが、そのランニングコースに、美味そうな佇まいのうどん屋さんがあるのだ。沖縄は、皆さんご存知のとおり沖縄そばが麺業界を席巻していて、次いでラーメンも実はその勢力を増してきている。そして、うどん屋は沖縄では圧倒的に劣勢で、見かけることが少ないのだ。

 

ぼくのランニングコースにあるうどん屋は、四国出身の方がやっているらしく評判はすごぶる高い。こちらに来て知り合った、香川県出身のYさんも太鼓判を押すお店だ。

 

夜道に提灯の明かりが灯り、そこには「うどん」はもちろん、「おでん」などという魅惑のワードも書いてあるのだ。コロナ禍で引き戸を開けて営業しているせいで、中で客たちが幸せそうに過ごしているのが覗える。中年の夫婦らしき男女が、カウンターに並んで食事をしている。緩やかに力の抜けた背中で、のんびりと並んで座っている風情が良いなあと思う。ほろ酔いセットなんかもあって、天ぷらなんかをアテにお酒を飲んでいるのだろうか、と想像する。会社帰りの先輩後輩といったような男性や、若いカップルが薄暗い夜道で、明るい店内に浮かんでいる。みんな幸せそうだ。

 

そんな光景を横目で見ながら、「あー、玉子焼とかき揚げで、お酒をのみたいなあ」などと思う。一年以上飲んでいなくても、お酒の誘惑は消えない。

 

目下の自分の目標を達成したら、少しくらいは良いんじゃないかと思いながら、今日もお店の前を通り過ぎるのだった。