南風通信

みなみかぜつうしん あちこち 風のように

ぼくには、ポール・マッカートニーがいる

「ぼくにはポール・マッカトニーがいる」

カーラジオから流れて来た「ジェット」を聴きながら、そう思った。

 

 ぼくは10代の半ばで、ビートルズを聴くよりも早くジョン・レノンのアルバム「ジョンの魂」に出会った。それから、すっかりジョンの虜になってしまい、その後の数年間のぼくのヒーローは、ジョン・レノンだった。

 そのせいで、ジョン目線でビートルズを見てしまい、ポールの印象があまり良くなかったのだ。

 

 確か、町田か橋本の駅の構内だった。外国人の若者が、洋楽アーティストのピンナップ写真を地べたに並べて売っていた。その頃は、よく分からない外国人の若者が路上に商品を並べて売っているという光景が、よく見られた。ハンドメイドっぽいアクセサリーなんかが多かったかな。もう最近は、そのようなシーンに出くわすことも無くなったけど、当時は当たり前の光景だった。

 

 それでその中に、ジョンのピンナップ写真があって千円で買った。広げた布の上に胡坐をかいている若い外国人に、千円札を渡して受け取ったピンナップ写真。モノクロの画面の中で、ウエーブのかかった長髪にサングラスをかけたジョン・レノンが、腕組をしてこちらを見ている。Tシャツには「NEW YORK CITY」のロゴ。

 アルバイト帰りにそれを買ったぼくは、下宿に戻ると、早速そのピンナップを部屋の壁に貼った。ジョン・レノンが亡くなって10年程経っていた。

 

 ジョンはNYのダコタアパートの前で銃に撃たれて40歳で亡くなった。当時の新聞がジョンの死を「暗殺」と書いた事もあって、センセーショナルな伝わり方をしたのだろうと思う。ずいぶんと政治的な発言やパフォーマンスもやっていたジョン&ヨーコ。ぼくには、その頃の記憶はなくて。20歳の頃のヒーローは、あの頃からずっと40歳のままだ。

 ぼくはと言えば、彼の年齢をとっくに越えて生きている。50歳を越えてた自分を、あの頃は想像できなかった。あのピンナップは、引っ越しの度に新しい部屋の壁に貼られたのだけれど、いつの間にか忘れ去られて何処へ行ったのだろう。

 

 最近、ちょっと体調が悪かったりもして、少し弱気になっていた。

そこへ、カーラジオからの「ジェット」だ。

 

 ポール・マッカートニーは79歳だけれど、バリバリの現役で、昨年12月にはフルアルバム「ポール・マッカートニーⅢ」を発表したばかり。このアルバムで31年振りにチャート1位を獲得したのも話題になった。

 

「ぼくにはポール・マッカートニーがいる」と思う。

 

最近はいなくなってしまった、本当にわくわくさせてくれる音楽を生み出してくれる稀有なアーチスト。

 

そしてまた僕は思うのだ。

「ずるいよ、ジョン・レノン」

 

ポール・マッカートニーは、絶対にそんなこと思っていないだろうけれど。

 


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