社会が進化・進歩してゆく中で、これまでどれくらいの新製品や新サービスが世の中に登場してきたのでしょう。
今では日常生活に不可欠となった「携帯式小型TV電話」(スマホの事です)が、この20年でこんなに世の中を変えてしまうなんて思いもしませんでした。むかし、初めてスマホの実物を店頭で見た時はすごくワクワクしましたし、単純に欲しいと思いました。それはまるでこどもの頃に、SFマンガの中で見た、未来人が持っている「携帯式小型TV電話」そのもののようだったのです。
思えば、いつもぼくは「未来」が形になった「最新型の機械」に、ワクワクさせられてきました。そして、新しい機械が現れる度に、それは便利で、ぼくを快適にしました。
最新型は次々に更新され、やがて、新しさにも慣れきってしまい、ついに最新型のマシンが、ぼくをワクワクさせることは少なくなってきました。
AIや自動運転車や仮想通貨が、一般的になる日常にワクワクする人は、それらにワクワクしない人よりも、どれくらい多いのだろうと思ってしまうのです。
かつての「新技術」は、あくまで人間の道具でしたし、人の方にそれをどう使うかの主導権はあったように思うのです。2018年の「新技術」は、その製品やサービスが、それ自体の使いこなし方を人間に要求しているような気さえします。モノや仕組みに人間が使われているような感じでしょうか。
「最新式」が、自分を幸福にすると確信できないところが、子供の頃に展望した「未来」と2018年に展望する「未来」の違いのような気がします。それに、こどもの頃に見たSFマンガには、超高齢化社会は出てなかったもんなあ。
機械がゆるくて、人にやさしかった時代の生き残り。フード自動販売機を見てそんな風に思いました。
高知市にある「コイン・スナック・プラザ」には、西日本でここにしかないという、ホットトーストの自販機もあります。
コインを入れて20秒ほどで出てきた、アルミホイルに包まれたアツアツのチーズトーストは、想像よりもずっと美味かったのです。
お調子者のぼくはもう一度コインを投入し、今度はあたたかいラーメンを自販機から取り出しました。
300円で、アツアツの食事を出してくれる自動販売機。
見た目はレトロで古びてて、ボタンやタイマーは時々調子が悪そう。でも、そうやって油断させておいて、この機械は、安くて温かい食べ物が人を幸せにするという事を知っているようです。
ある天気の良い昼下がりに、ぼくはどこかゆるいこのラーメンを、のんびりとおいしく頂いたのでした。
土佐弁のあんちゃん達も、時々これが食べたくなって、わざわざここに来るみたい。