南風通信

みなみかぜつうしん あちこち 風のように

釣れない釣り人の幸福な水辺4 (ルアーの誘惑)

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 LURE(ルアー):誘惑するもの、魅力、魅了、疑似餌、ルアー。

【weblio英和辞典】

 

今回は個人的な趣味の話になってしまいました。どうでも良いような話ですが、よろしければどうぞお付き合いください。

 

バスフィッシングを趣味として20年以上になりました。始めた頃は、こんなに長い付き合いになるとは思いませんでした。

バスフィッシングの面白さは、その釣り自体のゲーム性の高さにあります。釣りは自然を相手にしたゲームですから、すべてが人間の思うようにはいきません。だからと言って釣れるか釣れないかは、その日次第、運次第というものでは何の面白味もないものです。

様々な魚種を相手にした「釣り」がありますが、バスフィッシングは多くの釣りの中で、最も、運を排除してこちらから狙って釣る「釣り」の一つなのです。そして、バスフィッシングは1匹の偶然を2匹目、3匹目の必然に変える、再現性の構築のゲームなのです。

 

多くのバス釣り人(バスアングラー)にとって、もう一つ別の大きな楽しみがあります。それはルアーの収集です。バスフィッシングほど多種多彩なルアーが揃っている釣りはないでしょう。小魚などに似せた物はいかにもといった感じですが、中には宇宙人のような形のルアーもあります。(バスは何だと思って食ってくるのだろう)色も自然なものから、「こんな色の生き物いないだろう」的な色まで、何ともカラフルです。

LURE(ルアー)という単語を辞典で引くと、「誘惑するもの」という説明が真っ先に現れます。そうなのです。ルアーは魚だけでなく多くのバス釣り人を誘惑し、魅了し続けているのです。そして、ぼくも長い間トリコになっています。

 

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 「ワレワレハ  ウチュウジン ダ」ヘドン社製:クレイジークローラー

 

 

ルアー収集熱も最近は少し落ち着いてきましたが、お金が自由になる独身の頃はひどい有様でした。給料日に仕事が終わり会社を出ると、そのまま釣具屋へ直行なんてことが度重なりました。(ルアーだけでなくロッドやリールにも散財)そんな黄金時代を経て、その後もコツコツと手に入れながら今に至りますが、どのくらいの数あるのか数えたことがありません。

アタッシュケース型のタックルボックス(ルアーの道具箱)に2つと、それよりもずっと大きなプロのガイドが使うようなボックスに1つ。その他にも段ボール箱に2箱あったはずです。うーん。きちんと在庫管理しているわけではないんですよね。

 

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<ルアーの文化比較論>

 

手元にあるルアーには様々なメーカーの物があります。また、国産ルアーも外国製ルアーもあります。外国製ルアーの中には主に、アメリカ製のものとフィンランド製の物があります。今回、暇にまかせて眺めていたら、ルアーにも生産国によって随分と違いがあるなあと改めて思いました。

 

ここでいくつかのルアーを並べてみますと、日本製は外国製ルアーに比べて圧倒的に作りが精緻でリアルなんですよね。日本人の「匠の技」は、こんな所でもきっちりと発揮されているようです。

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        精緻でリアルな日本製ルアーたち

 

また、日本製ルアーは製品ごとのバラツキがほとんど無くて、どのルアーも100%の性能を発揮します。これがバスフィッシングの本場アメリカ製になると異なります。

バスの本場アメリカでは、バスフィッシングのトーナメントプロがいて、プロゴルファーのように高額な賞金を懸けてツアーを戦っています。

そんなトーナメントプロにとって、釣れるルアーは値千金の「仕事道具」です。そこでプロ達は釣れるルアーを大量に買う訳ですが、アメリカ製のルアーは日本の物と違い品質が均一ではありません。中にはちゃんと泳がないルアーが結構な割合で紛れていて、プロ達は買ったルアーを1つ1つ実際に泳がせてテストをします。そして、特に釣れる動きの出るものを1軍ルアー、ちゃんと動いてまずまず釣れるルアーを2軍ルアーと仕分けするそうです。なんでも、値千金の1軍ルアーは全体の1割にも満たないのだとか。スーパー釣れる「超1軍ルアー」というものもあるらしく、高値で取引されるそうです。

 

そんな本場アメリカのルアーをいくつか並べてみます。日本製のルアーと明らかに異なる雰囲気をまとったルアーたちです。どこか愛嬌があって陽気なアメリカ人風(?)でしょうか。

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     本場アメリカの長い歴史に裏打ちされたルアーたち

 

こうして眺めてみると、精緻で本物の魚のような仕上がりの日本製ルアーと、棒切れに釣り針を付けて、手書きで目を書いた子供のおもちゃのようなアメリカ製ルアーが両立しています。

ここがルアーの面白い所なんですが、本物の魚のようなリアルなルアーが、おもちゃのようなルアーより、必ずしも釣れるわけではないという事が頻繁に起こり得るんです。一見おもちゃのように見えるアメリカンルアーですが、やはりそれはバスフィッシングの本場の物。長い歴史の中で知り得た、バスが反応する「動き」や「波動」や「きらめき」や「色彩変化」や「音」などについての知恵がぎっしりと詰まっているのです。

比べて、日本はそういった歴史と経験値が少ないので「食性」に訴える(つまり生餌に似せる)という考え方に向かい、リアルな魚の姿になっていったのだろうと思います。またそれは、手先の器用な日本人に合ったんでしょうね。

 

 最後にフィンランド製ルアーを。

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      フィンランドの老舗メーカー製ルアーたち

 

どうです?北欧ぽいでしょう?北欧食器の皿の上に焼魚のように置いてみても似合うかもしれませんね。(笑) しかし、これらの可愛らしいルアーも研究に基づいた「釣れる動き」を備えた実用性の高いものなのです。

 

 

アメリカ製、日本製、フィンランド製を並べてみました。これを見ていると車のデザインを連想しそうになりませんか?

質実剛健なアメ車、低燃費で故障の少ない日本車、デザインと使い勝手に勝る欧州車。どうでしょう。こんなこと思うのぼくだけかな?

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    上:アメリカ /  スミスウィック社製 / ラトリンログ

    中:日本 / メガバス社製 / ライブXリバイアサン

    下:フィンランド / ラパラ社製 / シャッドラップ

 

 

と、ここまで書いてきましたが、ぼく自身はいわゆる「ルアーコレクター」ではないつもりです。バスをもっと釣りたいという欲求がこういった形になったのだと思います。ルアーとは飾って眺めるものではなくて、釣った思い出の数がそのルアーに価値を与えるのだと思います。

 

最後に、22年前ぼくが生まれて初めてバスを釣ったルアーを紹介します。それは生まれて初めてバス釣りに行った夏の日のことでした。場所は鹿児島県の山の中の小さなダム湖、市来ダムでした。幸運にも、ぼくは初めての釣行でバスを手にすることが出来たのです。傷だらけで、釣った魚の歯形も付いているルアー。こいつのせいでぼくは、今もバス釣りを続けています。

 

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         ダイワ社製 / TDポッパー