南風通信

みなみかぜつうしん あちこち 風のように

四国バースデイ・フリー切符の旅 ④

f:id:fuku-taro:20180112231345j:plain

2017.7.7

塩尻10:52発ー讃岐財田ー琴平ー多度津11:43着

 

コトトン、コトトン。レールを走る振動が心地よい。遠くの山々も近くの木々も、夏の雨に滲んで車窓を後方へ流れて行く。

土讃線を走る列車の中で、ぼくはただ流れて行く景色を眺めていた。

コトトン、コトトン、コトトン、コトトン。列車の旅はこの振動のリズムに段々と慣れてゆく旅だ。体がリズムに馴染んでくる頃、日常が遠くなってゆく。

 

前回の続きです。

 

www.fuku-taro.net

 

<土讃線をゆく>

愛すべき「秘境駅」、 坪尻を出た列車は琴平駅へ向かって走り始めました。琴平駅は金毘羅さん参りで有名な「金刀比羅宮」の玄関口です。金毘羅参りは江戸中期には伊勢参りに次ぐ人気で、庶民の憧れだったそうです。1368段の石段を上ってのお参りで有名ですね。

途中、讃岐財田駅に、土讃線を走る観光列車「四国まんなか千年ものがたり」が停車していました。グリーンの車体の観光列車の車窓の向こうには、大きなテーブルの上に料理が並び、白髪の紳士が穏やかな表情でビアグラスを傾けていました。余裕のある大人たちの列車旅。ぼくは、まだまだ余裕のない大人です。

塩入駅の手前で、不意に広大なひまわり畑が現れて、やがて後方へ消えていきました。親子連れやカメラを構えた好事家たちが、ひまわりと一緒に後方へ流れて行きました。ぼくが子供の頃、夏休みに家の脇にひまわりの種を植えたことがありました。母親がぼくの様子を伺いながら「米の研ぎ汁をかけたら大きな花が咲くよ」と言いました。「ウソだー」ぼくは全く信じなかったのですが、「本当だ」と言い張る母に促され、毎日「米の研ぎ汁」を貰ってかけ続けました。果たして、開いたひまわりの花は驚くほど大きく、しばらくの間近所の名所のようになりました。小学校の上級生の知らない子たちが噂を聞きつけ、ひまわりを見に来るほどでした。ひまわりには少年時代の想い出が似合います。きっと今日の少年たちも、夏の日のひまわり畑の想い出を忘れないのでしょう。

f:id:fuku-taro:20180113005519j:plain

f:id:fuku-taro:20180113005623j:plain

f:id:fuku-taro:20180113090236j:plain

f:id:fuku-taro:20180113001659j:plain

f:id:fuku-taro:20180113084803j:plain

f:id:fuku-taro:20180113001740j:plain

 

 <多度津の無印食堂と中国拳法>

お昼前に多度津へ到着。1時間程の後の列車で先へ進むつもりなので、ここで昼食を取る事にします。事前にお店の目途を付ける事もなく、行き当たりばったりがこの旅の唯一かつ強固な基本方針です。ここでこの旅のルールを再確認。

①スマホを使わない。

②日中ノンアルコール。

③旅の期間は本を読まない。(音楽も聴かない)

以上の3つ。

こんな時スマホを使えば評判のお店なんかがすぐに見つかるのでしょう。でも、この旅はそうはいかない。自分の足と直感で「美味しいお店」を探すのです。と、意気込んでみたものの、駅周辺の見える範囲にお店がありません。周囲を探索すると線路脇の建物の壁に「食堂」の文字と赤い矢印が見えました。他には食事が出来そうなお店がありません。スマホを使おうが使うまいが選択の余地なし。一択のみです。

看板に導かれ、駐車された車列の奥へ進むと、自販機の横の何も書いてない壁に引き戸があります。のれんのようなものがかかっているけど看板も店名も無し。「本当にここなの?」あやしげな引き戸を引くと、確かにお目当ての食堂でした。メニューは「日替わり定食500円」のみ。これも一択のみ。選択の余地なし。しかし、ごはん大盛りのフライ盛定食はとても美味しく頂きました。場所柄JRの職員さんが客の8割方を占めていました。女性はゼロ。男たちの昼食は狭いテーブルを譲り合いながらの相席で済ましてゆきます。店内のTVがお昼のニュースをやっていました。北朝鮮への制裁について、アメリカと中国・ロシアが対立しているとかなんとか。TVからそんな原稿を読むアナウンサーの声が流れてきました。しかし、ぼくにとっての目下の問題は、皿の上のアジフライにソースがドバっとかかり過ぎないように、ソース入れの傾き加減に細心の注意を注ぐ事なのでした。

 

f:id:fuku-taro:20180113005030j:plain

f:id:fuku-taro:20180113005152j:plain

f:id:fuku-taro:20180113004911j:plain

f:id:fuku-taro:20180113004817j:plain

f:id:fuku-taro:20180113004225j:plain

食後、駅前に戻ってくると「少林寺拳法発祥のまち」なるモニュメントがありました。「え?少林寺って中国のお寺じゃなかったっけ?少林寺拳法は中国の武術では???」とハテナマークが頭の上に沢山浮かびます。

後で調べてみると、中国の少林寺が発祥の中国武術は「少林拳」。そして、日本の香川県の多度津発祥なのが「少林寺拳法」だそうで、二つは全くの別物なのだそうです。知らない事って沢山あるなあと思わされるのも、行き当たりばったり旅の醍醐味です。

 

f:id:fuku-taro:20180113005334j:plain

f:id:fuku-taro:20180113005727j:plain

 12時44分、多度津発。路線は予讃線に変わり列車は西を目指します。

そういえば雨が上がって、お日様が顔を出し始めました。ひゃっほーい!

いい気分で旅は続きます。

f:id:fuku-taro:20180113084440j:plain

 

つづく。