この夏、台北を旅行した。ぼくは台北が好きだ。台北はぼくにはとても合うようで、そこにいると心身ともに緩やかになってゆく。
台北の市街地で、大きな犬がリードもつけずに自由に歩いているのを見て驚いた。
人通りの多い問屋街の通路脇では、やはりリードの無い大きな茶色の犬が器用に体を丸めて気持ち良さそうに眠っていた。
そう言えば、今の日本の街中で、リードのついていない犬が歩いているのを見る事はすっかり無くなってしまった。
ぼくが子供の頃には近所に大きな野良犬がいた。3、4頭で群れを作って町をうろつき、時折、人に向かって吠えては子供たちを怖がらせた。
そんな風景は、ほんの少し前までは日本の日常だったと思う。しかし、今では街中で野良犬を見る事はない。
台北の屋台で朝ごはんを食べながら、朝の人通りを眺めていた。
日本の犬たちはきちんとリードに繋がれて、台北の犬よりも洗練された顔つきで街を歩いている。
彼らは子供を怖がらせることもないし、女性を怯えさせることもない。オーナが傍にいてちゃんと管理してくれている。それはきっととても良い事なのだろう。日本では常識だ。
ある旅行作家の文章にあったと記憶する。
「世界中いろんな国を訪れたが、子供と犬が元気な国は例外なくいい国だった」
台北はぼくにとても合う。何をするでもなくそこを歩くだけでエネルギーが満ちてくる。
体はゆったりとなり、硬直していた好奇心が柔軟に動き始め、思考が伸びやかに羽ばたこうとする。
日本に帰ってきて、書こうとしてなかなか書けずにいた台北旅行記を、来週から書こうと思う。