ぼくが使っているカメラは2台ある。ニコンの一眼とリコーのGRだ。
カメラを始めようと思ったのは、ある写真家が街を撮ったスナップ写真を見たから。だから、最初に手にしたカメラはGRになった。
どんな趣味でもそうだと思うが、ハマりだすともっと性能の良いものが欲しくなる。それで思い切って一眼を購入するわけだが、カメラはスペックの比較だけでは測れない。
GRにしか撮れない写真があるのだ。
昔見た映画で、ビム・ベンダースの「ベルリン天使の詩」というものがあった。
ベルリンに住む天使たちは、齢をとることも死ぬことも恋をすることも出来ずに、ただ街とそこに住む人々を見つめ続ける。
しかし、恋をした天使は天使ではいられなくなってしまうのだ。堕天使は人間として生きなければならない。人間で生きる事は天使であった時と違い、肉体的な痛みを感じ、手にしたコーヒーの温かさを感じ、一人の女性を愛する切なさを感じる。
GRを手に街へ繰り出すと、あの時の映画を思い出す。
GRを手にしたぼくは、街を通り過ぎるだけの傍観者だ。
一瞬一瞬と視界に飛び込んでくる景色や人の営みは、もう2度と会うことのないもの。そして、心を誘惑し心に訴えかけてくる何かを、ぼくは光を絡めとる事でカメラに収める。傍観者はシャッターを切った瞬間に生身の人間になり、その刹那を愛おしく思うのだ。
GRを手に出かける日は「GR日和」だ。
GRでしか撮れない写真を撮りに行こう。GRで撮った写真は最もぼくらしい。