ある日、職場の若手のM君がにこにこしながら近づいてきた。手に一枚の紙を差し出し「よさこいの申込書ですけど、今年も出ますか?」と言う。
咄嗟に「もちろんだよ。よろこんでー!」と注文を受けた居酒屋の店員のような返事をしてしまった。どうやら高知の夏が始まるようだ。
昨年8月1日、ぼくは転勤で埼玉からここ高知へやって来ました。ぼくと入れ替わりの前任者は千葉県出身でした。転勤で初めて高知にやって来たという彼は4年間の高知生活ですっかり当地の魅力に取りつかれていて、名残惜しそうに埼玉へ異動しました。
取引先の引継ぎで、エアコンの効きの悪い軽自動車を走らせていた時に、前任者の彼が「よさこいが見れないのが残念だなあ」と言いました。
よさこい祭りは毎年8月9日の前夜祭から始まり、10日、11日の祭り本番、そして8月12日の後夜祭と4日間に渡って開催されます。彼も8月1日には埼玉の支店に着任になるのでよさこい祭りを見る事が出来なかったのです。
そんな彼の「よさこい愛」を聞かされて、ぼくもよさこい祭りがとても気になり始めました。
職場で何気なく「よさこい祭りに出てみたいです」とぽつりと言ったところ「え、あ、出ます?出れますよ」と返ってきました。思えばこのやり取りの中に、よそ者にもオープンな土佐人のおおらかさが見られますね。
そういゆう成り行きで8月1日に着任したばかりのぼくは、無謀にも地元の某チームに紛れ込んで2016年のよさこい祭りに参加したのです。
勿論、1週間程度で踊りが覚えられるはずもなく、踊り子隊のまわりで大うちわを扇ぎ鼓舞する役割でした。
初めて参加した「本家よさこい」はすごかった!楽しかった!です。
祭りの期間は会場となる市内中心街に交通規制が敷かれます。そして「地方車(じかたしゃ)」と呼ばれる大きな「デコトラ」のような車が列をなして走り始めます。この「地方車」は大音量を発する大型スピーカーを積んでいて、踊り子隊を先導します。昨年は参加チームが207チームでした。各チームに一台の地方車が付きますのでその数は207台になり、それらの地方車が中心街の細い道路をゆっくりと連なり走る光景は壮観です。
そして昨年参加したチームの2017年の練習がいよいよ6月から始まりました。ちなみに、よさこい祭りはただ踊っているだけではなく、優秀な踊りを披露するチームには「よさこい大賞」や「金賞」「銀賞」が贈られます。ここ高知での受賞チームの人気は広く市民に浸透しています。また、そういった「強いチーム」で踊れることは栄誉なのです。実際、「強いチーム」にはオーディションがあり、踊り子の選抜から始まるそうです。そして、練習も6月からなどではなくもっと早くからスタートするのです。
ぼくが参加するチームはそういった「つよいチーム」ではなく、お年寄りからよちよち歩きの子供まで参加する「ほんわかチーム」です。だから、飛び入りでも出れたんですね。なにせ本番前からビールをぐびぐび飲んでるようなチームです。8月の高知は暑いですから、飲んだビールもすぐに汗にかわります。
また、そういった「チーム」に参加しなくても当日に飛び入りで踊れる「市民憲章よさこい踊り子隊」というものもあり、観光客でもいきなり踊れます。でも、地元の人達は皆「市民憲章で出るよりもチームで出た方が面白いよ」と言います。たぶんそうなのでしょう。
よさこいは面白いです。またの機会によさこいの面白さについて書くこともあると思います。街全体が南国の暑さと祭りの暑さに包まれて熱病にでもかかったかのようになります。
「よさこいは見るものやない。出るもんや」地元の人たちは皆そう言うのです。昨年参加してその意味がよく分かりました。
この記事の最後にyou tubeで見つけた「強いチーム」の「ほにや」の映像を貼っておきます。これを見たらぼくも昨年の興奮が蘇ってきました。
練習頑張りたいと思います。