南風通信

みなみかぜつうしん あちこち 風のように

嬉しい本棚

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2020.3 那覇市

 

3連休中の真ん中だけど、コロナ感染拡大と台風接近で家から出ない休日を過ごしています。そして、こういう時にしか出来ない事をしようと本棚の整理をしています。

 

どうやら、我家は本が多いようです。昨年の引っ越しの際に、業者さんから「家具はそんなに多くないですが、本が多いですね」と言われましたっけ。

 

今回の本棚の整理で、出来るだけ捨てようと思っています。まず、本棚から本をすべて出してしまい、段ボールの中に仕舞ったままの本も出して、残すもの、捨てるものを選り分けているのですが、これが難しい。僕は断捨離に向いていないようです。

今回の本棚整理は、テーマを設けました。それは「眺めているだけで嬉しくなる本棚」です。ですから、仕事関係の本は、別の部屋に保管することにします。家で、寛いでいる時に眺めていて嬉しくなるような本棚にしたい、と考えているのです。

 

「眺めて嬉しい本」の候補は、読んでいると温かい気持ちになる「宮本 輝の小説」や、旅に出れない今だからこその、星野道夫の「旅する木」、沢木耕太郎の「深夜特急」などがあげられます。

 

趣味の釣り関係でアイザック・ウオルトンの「釣魚大全」に、開高健の「オーパ!」シリーズなども見ているだけで嬉しい。

 

同じく趣味の写真関係では、森山大道「路上スナップのススメ」写真集「写真よさようなら」、原康「お散歩写真のススメ」も良いなあ。カメラを持って出掛けたくなります。

 

マンガでは、ユルさが堪らない高田三加の「ねこロジカル」に、エルジェ「タンタンの冒険」シリーズ。それに、藤子F不二雄の「SF短編集」など。あと、現在連載中の「MIX」は、あだち充ですね。これも嬉しいです。

あと、忘れてはいけないのが、沖縄に来てから知った仲宗根美恵子の「ホテル・ハイビスカス」。このマンガは沖縄の空気感がとても現れていて傑作です。

 

更に、時々読みたくなる、谷川俊太郎の「自選 谷川俊太郎詩集」も捨てがたい。そういえば、若い頃に好きだった「ランボオ詩集」も手放してしまったなあ、などと考えていると時間があっという間に過ぎてゆきます。

 

これらに「台湾旅行のガイドブック」も、加えてみたくなります。

本棚の整理は、始めてみると思った以上に楽しいものでした。結局、終わらずに明日も延長戦です。

 

 

単眼複眼

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沖縄県 金武町 2020.7

 

世の中が正論で溢れている。

他人に迷惑をかけないように充分に気を配りながら生活するべきだし、ルールは守るべきだし、非生産的なことは良くない事だ。

合理的で、生産的で、理知的で、論理的な有能な人になりたい。皆がそう思うような世の中に見える。

 

アマノジャクなぼくは、千鳥の相席食堂のボタンを押したくなる。「ちょっと待てーい」と。

 

人間は、そんなに立派に出来ていないじゃないかい。そんな立派に出来ていない人間が、何とか立派でありたいたいと頑張ってるんじゃないかと。ずいぶんと無理ばかりしている毎日じゃないかと。そこの前提をなしにすると人間しんどいんじゃないかと。

 

仕事でお世話になっている駐車場に、ちょっと外人ぽい顔をしたおじさんがいる。もう、今まで充分に働いてきて、自分のそれなりの役割分くらいは働いて、今はゆっくりと駐車場の雇われ管理人のおじさんだ。

 

むっちりした体形に仕事用の青いシャツがよく似合う。大きな二重の目にはいつも笑みを浮かべていて愛嬌がある。冗談ばかり言っていて、誰にでも愛想が良い。

 

そんなおじさんが、車を出そうとしているぼくに、いつもの脱力した笑みを浮かべながら言う。

「コロナ対策だっていうけど、なんでパチンコ屋ばっかり閉めようとするの?パチンコなんてみんな台に向かって正面向いて打ってるし、会話なんてしないし、台と台の間にアクリル板置けば、飲食店よりもよっぽど安全だよ。俺はパチンコが趣味だからねえ」

 

正直、それを聞いてぼくは不謹慎な発言だなあと思った。でも、ちょっと待てよ、とも思う。言われてみれば、確かにそうかもしれない。飛沫感染がリスクだとすれば、向い合って飲食するお店の方がよっぽど危険かもしれない。そう思わないでもない。

 

「パチンコ屋で感染したって話ないでしょう。ねえ」このパチンコ好きなおじさんは、世の中の風潮が不満そうだ。

「でも、パチンコ屋で感染しても、パチンコ好きはそうだとは言わないわなあ」そう言っていつもの愛想の良い笑顔を浮かべる。

 

ぼくの車が出庫状態になり、会話は途切れる。車に乗り込み、キーを捻ってエンジンをかける。暑い日だ。カーエアコンの温度を下げる。

 

世の中にはいろいろなモノの見方があるものだなあと思う。ぼくの考えは、そのおじさんとは相容れていなかったけど、そういった考え方もあるんだなあと気付かされる。

 

皆、立場が違うし、物事の優先順位も違う。いろいろな見方、考え方があってしかるべきだろう。おじさんの話を聞きながら、自分が色眼鏡をかけて世の中を見ていると気付かされる。

 

子供の頃に、学校の先生が教えてくれたエピソードがある。

太平戦争開戦の時、アメリカの議会で真珠湾攻撃に対して日本に宣戦布告すべきだという事が決議された。その時、ただ一人だけ反対した女性議員がいたという。

「なぜ一人だけ日本に宣戦布告する事に反対したのか」との問いに、「私以外のすべての議員が賛成したから、私は反対したのだ」と答えた。そして「民主主義において全員の意見が同じというのは危険な事だと考えるから、私は反対票を入れたのだ」と。確かそんな話だった。

 

このエピソードは、ぼくの人格形成に強く影響したと思う。そして、その先生は何故こんなエピソードを子どもたちに話したのか分からない。

 

それが正しいかどうかは別として、様々な意見がある事は悪いことではないと思う。

駐車場のおじさんに、いつの間にか凝り固まったものの見方をしつつある自分というものを気付かされた気がした。

 

床屋談義

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2020.3 那覇市

 

 

髪を切る時に、美容師さんと話をする事が好きだ。

そんな時にあまり話をしたくないという人もいるだろうけど、ぼくは髪を切られながらする、どうでもいいような雑談を好む。

 

いつも髪を切ってくれるスタイリストの人はクダカさんという同年代の男性で、同じような時代をくぐり抜けてきているので、話が合うという事もある。

 

それに美容室は貴重な生の情報ソースになる。転勤族は、地元の人との些細な会話で多くの情報を得るのだ。ちょとスパイ小説みたい(?)な事を書いているが、もちろん、そんな大層なものでもなく、誰かのお役立ち情報でもありません。悪しからず。

 

「最近の若い子たちはググらないって知ってました?」

クダカさんは仕事柄、若い人と接する事も多いようで急にそんな話題が始まる。

「ググらないって?えーっと」

髪を切られながら気持ちよくなりつつあったぼくは、眠くなっていた。

ぼーっとしながら、そういえば、「だから、僕はググらない」って本があったよなあ、と思う。

 

ググる前に自分の頭で考えた方が、面白いアイディアが生まれるよ、というようなビジネス書ではなかったか。まだ読んでいないけど気になってる本だ。

 

面白い! を生み出す妄想術 だから僕は、ググらない。 | 浅生 鴨 |本 ...

 

 

曖昧なぼくに、クダカさんが続ける。

「何かを検索する時にググるんじゃなくて、SNSでフォローをしている自分の好きな有名人なんかを、ハッシュタグで検索するらしいですよ」

 

ああ、ハッシュタグね。長州力の「井」の事ね。クダカさんが言っている事は、SNSに疎いぼくにも分かる。

 

「なんか、そういうのってスゴイ狭い世界ですよねえ」

「そうですよねえ・・」

デジタルが苦手なおじさん達は頷き合う。

 

ぼくらの若い頃と違って、インターネットとSNSの発展で情報量が多すぎる時代なのかもしれないと思う。若い人たちなりに、この情報の大洪水時代を生きる知恵なのだろうか。

 

「昔、インターネットが普及し始めの頃に、インターネットは便所の落書きみたいなものだ、って言っていた人がいましたねえ。何かのコラムだかエッセイだかにか書いてあったと思うんですが」

「え、どういうことですか」

「匿名の人が、適当で無責任な事ばかり書き殴っているって事だと思うんですけど。昔の公衆便所って、壁に落書きがたくさん書いてませんでした?電話番号と名前が書いてあって、この子は誰とでもデートします、みたいな下世話なヤツとか」

ぼくは30年くらい前の駅のトイレの個室の壁を思い出しながら言う。当時の駅のトイレの個室の壁は、大体そんなくだらない落書きが書かれていた。思い出したのだろう、クダカさんも笑っている。

 

ふと思う。そういえば最近のトイレの壁って清潔で落書きなんか書かれてないな、と。

これはひょっとするとインターネットやSNSの普及と、トイレの落書きの数は反比例しているのではないか?ぼくは重大な発見をしてしまったような気がしてくるが、もちろん、そんなものは重大でもない単なる思い付きだ。

 

トイレの個室の閉鎖された狭さとインターネット。減っていく落書きと、増えていくSNSでの誹謗中傷。あのコラムだかエッセイだかの文章はあながち間違いではなかったのかもしれない。

 

「デジタルが苦手で、できるなら、スマホとかも使わないで済むならいいんですけどねえ」

「だけど、最近じゃ飛行機のチケットを取るのでもスマホがないと不便でしょう」

「そうなんですよねえ。面倒な世の中になったなあ」

 

そんな、アナログおじさん達の会話(愚痴?)は、しばらくだらだらと続くのであった。

 

私的不定期名曲選『この曲もえーやん!』㉕ Don't Let Me Down / The Beatles


The Beatles - Don't Let Me Down

 

何故、こんなにも大変な事ばかりがやって来るのだろう。

 

どうしようもない出来事に、今日は打ちのめされたとしても、明日はきっと良い日する。空がどんなに曇っていても、心には太陽を昇らせたい。

 

どうかご無事で。

元気でいてくれればそれでいい。

助け合うことが必要だ。

励まし合うことが必要だ。

 

テレビニュースが流れている。

 

Don`t Let Me Down

Don`t Let Me Down

 

 

 

 

友人からの便り

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 2020.6 沖縄市

 

 

 学生時代の後輩で、大切な友人のそうちゃんから葉書がきた。コロナ禍のステイホーム中に書いた葉書からやり取りが続いている。楽しく嬉しいことだ。

 ぼくと彼は音楽の趣味が合う。二人とも「プリンス」を好きでいるし、キリンジの世界にぼくを引き入れたのはそうちゃんだ。

 そんな二人の共通の趣味の一つが読書。学生時代は同じ文学系サークルにも所属していました。葉書の中で彼は、最近読んだという「ガルシア・マルケス」の事に触れ、「予告された殺人の記録」と「命の猶予は十二時間」を薦めてくれていました。

 

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この作家の有名な作品に「百年の孤独」というものがありますが、読んだことがありません。それどころかガルシア・マルケスを読んだことが無い。しかし、同じ「百年の孤独」という名をつけられた宮崎県の焼酎は飲んだことがあります。今度こそ、ガルシア・マルケスを読んでみよう。

 

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良い本を探すには、本をよく読んでいる人に聞けばよいとも言います。友人からの便りは、いつも、ぼくの好奇心を少し広げてくれるのです。

街の記憶15

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2020.5 那覇市

 

 今年のGWはコロナ禍のせいで、国際通りはガラガラだった。GWの航空機の予約が満席だという事で、県外からの大勢の観光客の流入とコロナ感染拡大が危惧されたのだけれど、結果的には、観光客どころか人影もまばらのGWになってしまった。

 本格的な夏前で、沖縄の一番良い時期なのに残念な事だった。

 国際通りの有名なステーキハウスはもちろん、ほとんどのお店のシャッターが下ろされていて、「奇跡の1マイル」と呼ばれる通りは急に寂れてしまったように見えた。こんな国際通りを見るのは滅多にないことだと思う。

 

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2020.5 那覇市

 

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2020.5 那覇市

 

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2020.5 那覇市

 

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2020.5 那覇市

 

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2020.5 那覇市

 

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2020.6 沖縄市

 

6月に入って世の中が少しづつ動き始めた頃、沖縄市を訪問。

米軍基地の門前町のように発展してきた街。沖縄の戦後史を一番体現している街かもしれません。

 

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2020.6 沖縄市

 

パルミラ通りのカレー屋さん。その名も「パルミラ」。店名が先なのか、通りの名が先なのか?2種類のカレーを一度に味わえる「日替わりカレー2種」を頂きました。

マグロのカレーとバターチキン。二つの味を同時に味わえるのはうれしい。

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2020.6 沖縄市

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2020.6 沖縄市

 

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2020.6 沖縄市

 

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2020.6 沖縄市

 

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 2020.6 沖縄市

 

日常のよろこび

コロナ禍でステイホームを強いられていた頃、街の飲食店が大変だというニュースがたくさん流れていた。

そんな時に応援したくなるお店とはどんなものなのか?そんな事を考えた。

美味しいお店は沢山あるけど、その全てを応援しようと足を運ぶのは難しい。このコロナ禍で、こちらの懐具合だって心配なのだ。だからといって家にこもってお金を使わずってばかりもどうなんだろうと思った。微力ながらも応援したくなるお店は、味はもちろん店主やお店の雰囲気がトータルで好きなお店だ。

そんな頃によくお邪魔したのが『鶏そば新里』さん。

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このお店の鶏そばは、ぼくが沖縄に来て初めて食べたラーメンなのだ。最初にこのお店に来れたのはラッキーだったと思う。鶏の旨味がたっぷりのスープと少し歯応えのある麺がとても合う。沖縄に来て一番通っているお店になる。


この頃、4月から5月にかけては、国際通りもシャッター街になってしまい、ゴーストタウン化した。
国際通りの裏通りにある、沖縄料理屋『まんじゅまい』も店を閉じたままだった。
長い休業期間を経てお店が開いているのを見て、すぐにお邪魔した。人通りの消えた国際通りに希望の灯が灯るような気がした。

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久し振りに頂いたのは、沖縄らしい黄色いルゥのカツカレーだ。沖縄のカレーは黄色くてスパイシーだ。最初に見たときは、あまりの黄色さに驚いた。でも、今ではこの黄色いカレーが大好きだ。優しくて懐かしい味なのだ。

最近は、コロナの第2波が心配されている。国際通りでは、まだシャッターを下ろしたままのお店も多い。人通りは少しずつ増えているが、まだまだ少ない。

コロナ対策と経済のバランスが難しい中で、本当に好きなものや、大切なものにお金を使うようになった。

なかなか厳しい世の中だけど、そんな中だからこそ感じる喜びや楽しみもあるようだ。

自分が本当に好きなお店で食事をする事も、そんな喜びのひとつなのだ。