南風通信

みなみかぜつうしん あちこち 風のように

キリンジを送る

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11月の下旬の東京は肌寒くて、本格的な冬の訪れが近い事を思い出させてくれた。

久し振りの東京出張なのだ。

 

沖縄生活一年目で、当地での初めての秋冬を迎えようとしているのだけど、もう本土と感覚にズレが生まれているようだ。

この記事を書いている12月7日だって、那覇市の最高気温は18度の予報。ちなみに東京のそれは9度だ!

 

それはそうと東京出張で、学生時代の後輩と飲む事になった。後輩と言っているけれど、ぼくの中では数少ない大切な友人の一人だと思っている。ぼくは、そんな彼の事を親しみを込めて「そうちゃん」と呼ぶ。

 

「そうちゃん」との待ち合わせは、手羽先がウリの大衆酒場。飛行機が少し遅れ、羽田から直で店に急いだ。

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Googleマップを睨みながら、そうちゃんが予約したお店を探す。やがて、辿り着いたその場所の店構えを見ながら嬉しくなる。

そのお店は「ザ・大衆酒場」という表情なのだ。学生時代からぼくらは安酒の飲めるお店が大好きだった。お店で飲めれば良い方で、線路沿いの目覚まし時計が不要のアパートに仲間たちが集まって、「大五郎」を飲みながら、くだらなくも真剣な会話を楽しんだものだと思った。

 

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しばらくぶりの再会を乾杯で祝うと、いつものようにどうでもよく、取り留めのない雑談ダダ流しの時間に。話題は最近読んだ本の事や、音楽や映画の事、何故か空手の起源についての考察などから、世相や政治経済にまで広がる。この他愛もない雑談の時間ほど贅沢なものはないなあ、と思うのは最近の事だ。

 

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この酒席で、そうちゃんが熱く語ったのが「キリンジ」というバンドの事。あの有名な「エイリアンズ」を歌ったバンドだ。

彼が、「あのユーミン(松任谷由美)が、キリンジのエイリアンズを初めて聴いた時に、『やられた』といったんですよ!」と嬉しそうに言いながら、ビールを流し込んだのは良い光景だった。

 

 

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後半は村上春樹論となり、ねじまき鳥を最高傑作だと言う、そうちゃんと、初期三部作+ダンス・ダンス・ダンスにこそ村上春樹の本質があるというぼくの議論は、何杯目か分からないビールとハイボールのお陰でぐにゃぐにゃな展開になって可笑しかった。

 

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久し振りの東京から戻って暫くが経って、今、この記事をキリンジのアルバム「キリンジ・3」を聴きながら書いている。このアルバムのCDを、そうちゃんがわざわざ送ってくれたのだ。CDが売れない時代にCDを聴き、郵送でそれをやり取りするぼくらは、きっと少しづつ時代からずれている。でもね。だからこそ心安く、楽しいんじゃないか。

 

ぼくが東京の端っこで暮らした時代は、もう随分と昔になってしまった。あの頃の東京はもっとキラキラしていたんじゃなかったかなあ、なんて思う。

2019年の初冬。少し疲れているように見えた東京の街で、古い友人との無駄話が、コントラストを効かせて輝いたような夜だった。