南風通信

みなみかぜつうしん あちこち 風のように

高知で一番好きな店

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ひとりでふらりと飲みに行く事がありますか?

平成の終わり、令和の始まりの世の中で、一人飲みは世間的にはどういう風に捉えられているんでしょうね。

若い人たちがお酒を飲まなくなったという記事も何処かで読んだような気がします。そんな時代に。

 

「何だか寂しそう」

「大勢で飲んだ方が楽しい」

「一人で飲みだしたらヤバイ。依存症?」

 

あまりポジティブな印象が浮かんできません。

世間ではどう思われていても、それはそれとしつつ、敢えて言い切りたいのです。

「一人飲みは心地良い」

 

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関羽の看板メニュー「ゆでタン」

 

そう、一人飲みは、楽しいでも嬉しいでも美味しいでもなく「心地よい」のです。

最近は飲み会に参加するよりも、この一人飲みの方が多いくらいです。

一人飲みの良さには、色々な要素があるだろうと思うのですが、その中でも一番の良さは「気楽さ」だろうと思います。

 

仕事帰り、「ちょっとだけ飲みたいな」という時に、家路へ向かう足を方向転換して、馴染みのお店の戸を引いてみる。

中を覗き込んで、カウンターが空いてればしめたもの。カウンターに空きがなければまたの機会にしましょうか、となる。これもまた良しとしましょう。

 

一人飲みは、始まりがこんな感じだから終わりもまた気楽なものです。

「今日はいつもよりも酔うな」そんな時には、もう一杯を留めて席を立つ。心地よい酔い味だけが残ります。

常連さんや一見さんと、会話が始まる時もあります。でもこれは店によりけりだな。カウンターで肩寄せ合う縁に始まる無駄話が、起こりやすい店と起こりにくい店があるようです。ここ「関羽」は、無駄話が起こりにくい店だと思う。カウンターの一人客は、それぞれに美味い串焼を味わい、酒の酔いを楽しんでいるようです。

 

高知市中心街の帯屋町アーケードにある、リッチモンドホテルの入り口脇の人気のない通路を進んで行くと、その先の路地が「おびや町小路」です。

隠れた名店の並ぶこの目立たない路地に「医食同源の店 関羽」はあります。このお店こそ、ぼくが高知で一番好きな飲み屋さんです。

 

ここの大将は、店を一人で切り盛りしています。ですから、空いたお皿の片づけやビールの追加などは、心得た客達が自分でやってしまいます。その間も大将は黙って炭火台の前に立って串を焼いています。それが当たり前の光景。

 

ぼくが店に入ると、カウンターに前の客の使った皿が残っていました。自分で皿を重ねて上に片づけ、布巾でカウンターを綺麗に拭き上げます。そして、ようやく椅子に腰を降ろすと、左右の客からおしぼりとオーダー表がすっと無言で差し出される。そんなお店なのです。

 

「ここはサムライの店やき」という声が聞こえました。この店の常連らしき、おじさんグループです。会話の内容から武道系に方々のようです。警察関係の方かな?無骨な大将と無骨な客のお店なのです。

 

夏場には店の引き戸は開け放たれています。この店には冷房も、扇風機さえもありません。客たちはカウンターに無造作に置かれている団扇を片手にいビールを飲んでいます。こんな時には炭火台の前の席には座ってはいけません。そこはちょっとしたサウナ風呂くらいの温度にはなっているでしょう。それでも満席なのが関羽なのです。

 

いつだったか時間が経って客が落ち着いてきた時に、大将が焼き場を抜け出して、店の外で座り込んで夜風に当たっていた事がありました。

声を掛けると「熱いからねえ、本当、堪える」とぼくを見上げて言いました。

 それからしばらくしてからでしょうか。大将と息子さんが一緒に焼き場に立つようになり、その機会は少しづつ増えているように思います。でも、サムライの店の大将と息子さんの間に会話はほとんどありません。

 

ぼくの一番好きなお店は、土佐人に長く愛されるお店です。大将にはいつまでもお元気で頑張って頂きたい。そう思う人は、ここ高知にかなり多いと思うのです。

 

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関羽の串焼き。レバーとナンコツ(この日はナンコツが出過ぎてニセミノを挟んでいます)

 

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高麗人参と漢方生薬に付け込んだ「人参酒」

 

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赤牛のタタキ

 

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赤牛のハツステーキ

 

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風貌が独特で、一度見たら忘れられない大将

 

 

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