南風通信

あちこち 風のように

四国バースデイ・フリー切符の旅 ⑧

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2017.7.8

伊予市14:57発ー下灘15:21着

下灘16:35発ー伊予大洲17:39着

 伊予大洲17:42発ー内子18:13着

 

走る列車の車窓から、薄曇りの空を見上げる。薄く空一面に広がる雲が淡く輝いている。それはまるで陽光の間接照明のようだ。

その淡い光の雲の下で、白く穏やかな海が広がる。内海には、太平洋にはない穏やかさがある。白く穏やかに揺れる海面は、上等な日本酒を作る酒蔵の中で、静かに発酵する麹のように見える。

海と空の境目が一瞬分からなくなる。遠くに薄青い島影が見えた。列車は、予讃線を西に下って進む。下灘駅が近い。

 

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<青春18きっぷと海辺の駅>

 

「次は下灘」と車内アナウンスが流れると同時に、右手に海が開けました。緩やかに発酵し続けるような「白い海」。母なる海とはこんなイメージでしょうか。

「日本で一番海に近い駅」と言われた駅は、海辺の国道沿いに、小さく佇んでいました。かつて、海岸が埋め立てられて、そこに国道が走るまでは、本当に駅のすぐ下にまで海が迫っていたそうです。この国道の完成によって下灘駅は「日本一海に近い駅」から「日本一海に近かった駅」に変わったのだとか。でも、ぼくにとって「いつか来たかった駅」である事には、変わりがありません。

 

この下灘駅が有名になったのは、「青春18きっぷ」のポスターに三度も取り上げられたからでしょう。確かにこの駅に立って、ポスターで見たことのある有名なベンチ越しに穏やかな瀬戸内の海を眺めると、たまらなく旅情がこみ上げてきます。

「すみません。シャッターを押してもらえませんか?」

若い女の子二人組の記念撮影をお手伝いする事になりました。

青春18きっぷのポスターと同じ構図で、ベンチに並んで座った女の子たちを、カメラのモニターに見ながらシャッターを切りました。

海辺の駅と若い女の子の組み合わせは、抒情的で絵になるなあ。そんな事を思いました。

 

下灘駅の駅前には、コンビニも、商店街もありません。海の反対側は狭い道路を挟んで、すぐに山の傾斜が迫っています。そして、その傾斜のすそに、ポツンと白いワゴンの「下灘珈琲」はありました。

伊予市駅で出会った小学校二年生のSくんが、少し大人びた口調で「あそこのコーヒー美味しいらしいよ。TVでやってた」と教えてくれたコーヒーショップです。

 

Sくんとの出会いはこちら↓

 

www.fuku-taro.net

 

 

下灘珈琲のおねえさんに、アイスコーヒーをオーダーします。

「ここは、TVに出てたんでしょう?伊予市駅で知り合った小学2年生の子が、『下灘行ったら、下灘珈琲飲んだらいいよ』って教えてくれたんですよ。」と声を掛けると、おねえさんは「わあ!やるなー小学2年生!」と、嬉しそうに明るく笑いました。アイスコーヒーを受け取り、海を眺めながら飲みました。冷たくて、冷ややかな苦みがとても良いのです。

 

ぼくと一緒にこの駅で下車した人々は、例のベンチに腰掛けて、思い思いに写真を撮ったりしていましたが、今は少し落ち着いて、ベンチで静かに海を眺めながら話をしたりしています。

下灘珈琲の白いワゴンの脇に立てかけた黒板には、白いチョークの文字で

 

「本日の日の入り 19:23」

 

と記されていました。

もうしばらくすれば、この駅の夕景に魅せられたカメラマンたちが、大きなカメラと三脚を抱えて大勢やって来るのでしょう。ここは夕景撮影のメッカでもあるのです。次の列車は16時35分発。ぼくの夕景撮影は、またいつかにお預けです。

 

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<レトロ・ロマンの町、内子町へ>

下灘駅を16:35に出た列車を、伊予大洲で乗り換えて、本日の宿のある内子へ向かいました。途中、観光列車「伊予灘ものがたり」とすれ違いました。赤い列車の車窓から、ご婦人がこちらの列車に向かって手を振っていました。なんとなくぼくも手を振り返します。見知らぬ人同士がやさしくすれ違う。これも旅というものなのでしょう。 

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18時過ぎに列車は、人口1万6千人の山間の小さな町、内子町に到着しました。この内子町は、江戸後期から明治期の建物群が保存されている町なのです。大正時代に創建された芝居小屋「内子座」は、今も現役で使用される国の重要文化財です。

内子駅を出ると、正面に引退したSLが設置されていました。それは、夕暮れ近い山々に囲まれたこの駅の雰囲気を、どこか懐かしいものにする事に成功しているようです。

一日中大きなボストンバックを背負って移動し続けたぼくは、すっかりくたびれてしまいました。駅前のタクシーに乗り込むと、宿泊先の宿の名を告げます。

「松乃屋さんですねー」女性の運転手が言います。

「今日は夜市で子供が沢山きてますよー。松乃屋さんの前辺りは通行止めになってるから、裏から回りますねー」

どうやら今夜は、近隣の親子のお楽しみとなっている夜市が行われているらしいのです。

どこか昔の知人に似ている女性運転手は、一人語りに続けます。

「この町は長生きな人が多いんですよー。一人で元気に暮らしているご老人も多くてですねー」

タクシーの車窓から、町並みを眺める。町は自然の中によく馴染み、時間がゆっくりと流れているようだ。ここなら確かに長生きしそうだ。

「本当に静かなところでしてねー。はい、ここで止めますね。今日は夜市だから賑やかだけど、普段は本当に静かなところなんですよー」

タクシーが夜市の人だかりの手前に止まった時、普段は静かな町にはB`Zの曲が、夜店のテントからガンガンに流れていました。タクシーがドアを開けると、ちょうどその時、稲葉浩志のボーカルがシャウトしたのでした。

「ウルトラ・ソオウッ!!」

普段はきっと静かな町なのです。でも、これはこれで悪くないと苦笑します。夏の宵の風が心地よい。

ぼくが宿で荷物を解いた後も、静かな町のささやかな夏の賑わいは、長く続きました。窓の外にその小さな賑わいを聞きながら、ぼくは 、子供の頃に両親と行った遠い日の夜市の事を思い出すのでした。それは、きっとこの内子町を包む、懐かしい雰囲気のせいでもあるのでしょう。

 

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<旅館 松乃屋は小さいけど、とても良いお宿>

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<旅館 松乃屋の窓から>

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<松乃屋の料理は、質・量ともに申し分なし>

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<トマトの冷静スープの稲庭うどんは繊細な味わい>

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<トマト、ホタテ、エビ、レンコンを使った料理>

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<媛っこ地鳥の柳川風>

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つづく。