南風通信

みなみかぜつうしん あちこち 風のように

四国バースデイ・フリー切符の旅 ⑤

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前回の続きです

 

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 2017.7.7

多度津12:44発ー観音寺13:15着 

観音寺13:41発ー伊予西条14:52着 

伊予西条15:27発ー今治16:04着

 

フリー切符の旅は「何もしない事」をするための旅だ。今どきの電車内の光景は、横一列のベンチシートに並んだ乗客が皆それぞれにうつむいてスマホの画面に視線を落とす。現代的な生活は機械相手の世界に入り込み、人との交流が希薄になってきているように思う。コミュニケーションツールがすごいスピードで発達する傍らで、ぼくらはどんどんコミュニケーション下手になってゆくようだ。ぼくはスマホを手放した自分の感覚を確かめようとする。

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<眠る女の子たち>

 

 多度津を出た列車は観音寺に到着しました。ここ観音寺で乗り継ぎの為に約30分の停車になります。動力が止まりしんとした車内で、ただ時間が過ぎるのを待ちます。停車中の車内には高校生がたくさん乗っていました。平日の午後早くにも、列車の中にはたくさんの高校生がいるんですね。授業が早く終わる日なのかな。みんな普通の子たち。

横一列のベンチシートに7、8人並んで座っています。一列の真ん中あたりに、坊主頭の髪が少し伸びたような感じの素朴な男の子が一人。それ以外はみんな女の子たち。やがて女の子たちはシートに上半身を横倒しにして眠り始めました。夜遅くまで勉強が大変なのかな。向かいのシートの女の子たちは全員バタバタと倒れるように眠ってしまいました。短いスカートから足を放り出していて、おいおい、と思います。真ん中の素朴少年だけがぽつんと背を伸ばして座っています。彼は、なんとなく居心地が悪そう。

 

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<鉄道マニアじゃないけれど>

 

列車は伊予西条駅に滑りこみました。列車がホームに侵入する時、窓の外に「四国鉄道文化館」なる文字が目に入りました。伊予西条駅でも35分の停車時間があります。フリー切符の旅は急がない旅でもあるのです。折角ですから途中下車して「四国鉄道文化館」を覗いてみることにしました。

入場料は300円。

伊予西条市出身で第4代国鉄総裁の十河信二(そごうしんじ)は、東海道新幹線の建設を実現したした人であり、「新幹線の父」と呼ばれるそうです。そこには信念と苦闘の物語がありました。エリア内には十河信二記念館もあります。

鉄道文化館内には、ゼロ系?新幹線が展示されており、運転席にも入る事が出来ました。運転台の速度メーターは260㎞まで刻まれています。当時の技術は凄いなあと改めて思います。

館内にはいろいろな展示物があります。色々と興味深く見て回りますが、実は、ぼくはあまり鉄道に詳しくないのです。写真を撮るには画として良いんですけどね。それなのに何故、鉄道の旅を続けるのかと言われれば、流れゆく景色を眺めるのが好きだからでしょうか。ぼくは鉄道マニアではなく、どちらかと言えば「ロードムービー」マニア。まあマニアでもないのですが少年の頃からロード―ムービーと言われるジャンルの映画がとても好きなのです。移動する事が好きで、流れゆく人と景色が好き。そういえば転勤族としての人生も「ロードムービー」的なのかもしれません。

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           「鉄道の父」十川信二の像

 

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<笑う男の子たち>

今日の宿泊地「今治」の手前、伊予桜井に停車中のこと。ホームに停車した列車の窓外に、別の列車が並んで停車していました。その列車の窓の日除けの隙間から少年たちがこちらを見ています。ぼくが冗談半分でカメラを向けると、笑顔でピースサインをしてくれます。ぼくも微笑むと、窓の日除けがすうっと上がって更に多くの少年たちが。思い思いにポーズを取る彼らをファインダーから微笑ましく眺めながらシャッターを切りました。

とっても良い笑顔だね。ぼくは親指を立てて彼らに応えました。列車が動き始めます。少年たちの笑顔が一瞬の爆発から、「はにかみ」に変わりつつあるのを見届けながら、ぼくは手を振ります。さようなら。ありがとう。

 

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<今治でスマホを失くし、地元グルメで心を癒す>

 

今治市は造船とタオルの街です。世界シェア3位に入るとも言われる今治造船の本社は、勿論、今治市にあります。そして、今治タオルはその品質の高さで多くのファンを獲得しているタオルの一大ブランドです。

 

 

 

 

また、今治といえば2012年のゆるキャラグランプリ1位「バリイさん」の街です。地元のB級グルメもいろいろあるようで楽しみにして来ました。駅の構内でいきなりバリイさんに遭遇しました。待ち合わせにぴったりの場所ですね。

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       今治は猿飛佐助のふるさとでもありました。

 

 

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駅前の今治アーバンホテル新館にチェックインすると、すぐにカメラ片手に街へ繰り出します。以下、今治駅周辺をカメラ散歩した際の写真です。

 

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     市役所の裏には船のスクリューのモニュメントが

 

 

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 今治城。日本画の大家、平山郁夫がスケッチしたという場所からパチリ

 

 

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1時間半ほどかけてひととおり街を歩いた後、おなかも空いたことだし夕食にしようと考え、来る前から目星を付けていた、今治名物「焼豚玉子飯」の名店、「重松飯店」へ向かおうとしました。

「うん?ちょっと待てよ。スマホどうしたっけ」

今日は平日なので、会社から緊急の電話が入るかもしれません。この旅はスマホを使わないルールなのですが、一応携帯していました。そのスマホが見当たりません。写真撮影に夢中になって何処かへ置いてきたようです。昨夜の深酒がまずかったのか、それとも旅行の疲れのせいか・・・。あれこれ悩んでいてもスマホは出てきません。1時間半かけて歩いた道を、更に1時間かけて歩いて辿っててみましたが、スマホは見当たりません。辺りが段々と暗くなってゆきます。

「もう限界。疲れた。腹減った」

ぼくの頭の中が「ドーでもいいや」モードに切り替わったので、諦めて再度「重松飯店」を目指します。

やっとの思いで辿り着くと(3時間歩きっぱなし)、店の前には行列が出来ていました。5、6人の公務員か、金融機関風のグループと、観光客らしい女の子二人組、そしてカップルが一組。

30分ばかり待った後、入店し、やっと焼豚卵飯(中盛)と対面した時は、感極まりそうになりました。目玉焼き3つ(!)の下には、肉厚でしっかりと味の付いた焼豚がぎっしりと並んでいます。その下のごはんには甘辛の濃いめのタレがかかっていて。これ嫌いな人いないだろう的な旨さです。そして生ビールをぐびり。ふう。

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さて、このままホテルに戻ろうかと思いましたが、ここ今治には、焼豚玉子飯と双璧をなすB級グルメがもうひとつ。それは「今治焼鳥」なのです。普通の焼鳥は串に刺して焼きますが、この「今治焼鳥」は、串に刺さずに鉄板でそのまま焼くのが流儀だとか。カメラ散歩の際に見つけておいた「山鳥(さんちょう)」さんの暖簾をくぐりました。

さほど広くない店内は客で埋まっていて、1つだけ空いていたカウンターの席に落ち着きます。早速、焼鳥の皮を注文。追加でたこのてんぷらと焼鳥のキモをオーダー。そして、ここでもビール。

皮は黒いタレがかかっていて、やはり串はなし。キモの方は何故か串にさしてあって普通の焼鳥風です。キモを食べればその店がわかる、と思い込んでいるぼくは、必ず初めての焼鳥店ではキモを注文します。

ここのキモ串は、新鮮でぷりぷりしていて旨い!追加でオーダーした、たこてんも濃い目の味がついていてビールに合います。

あー、しみじみうまいなあ。美人の若い女将さんが目の前の鉄板で調理する手つきを、ビールでゆるくなった頭で眺めます。

やがて、失くしたスマホの事が、頭に浮かびました。

「明日は明日の風が吹く」

反省と適度な楽観は生活の知恵です。

「ピンチの中にもチャンスあり?」

意味の合わない、座右の銘的な言葉が酔いとともに頭を回り始めました。

初めての街の初めての店。知ってる人が誰もいないのに、逆に満たされてゆくような気分です。

「明日は明日の風が吹く」

ぼくは目の前の焼鳥に集中し、もう一口ぐびりとビールを飲みました。

高知、徳島、香川を駆け抜けた旅は、ここ愛媛県、今治市の焼鳥屋でようやく長い1日を終えようとしていたのでした。

 

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      まだ8時前なのに誰もいないアーケード

 

 

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つづく