南風通信

みなみかぜつうしん あちこち 風のように

四国バースデイ・フリー切符の旅 ②

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前回の続きです

 

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2017.7.7

「秘境駅」というものをご存じだろうか。四国には全国的に名高い「秘境駅」があるらしい。「秘境」という言葉は、少年時代に憧れた冒険譚を思い起こさせる。それだけでワクワクさせられる。そのワクワクに誘われて「フリー切符の旅」の初日は徳島県三好市にあるという、秘境駅「坪尻駅」を目指す事にした。

 

<大歩危で妖怪に会う>

6:00高知発ー6:48大歩危着(土讃線)

 

特急南風2号はそぼ降る雨の中、高知駅をゆっくりと滑り出しました。いよいよ「フリー切符の旅」の始まりです。列車が動き出すと間もなく、アニメのアンパンマンの声が「本日はご乗車ありがとうございます・・・」と、迎えてくれました。四国各地でこのアンパンマン列車が運行しているようです。朝6時のアンパンマン。良い感じです。フリー切符の旅っぽくなってきました。

少し落ち着いて、シートに背中を埋めると、車内の冷房に汗ばんだTシャツが寒く感じました。鼻水が流れてきて風邪を引いたのかもしれません。昨夜のお酒で体はすっかり参っているようです。

車内は中高年の男女が10名ほど。通勤でしょうか。30分も走ると山間に霧が低くまとわりついたような景色が窓外に流れ始めました。やがて吉野川を下に見ながら列車は川と並んで走ります。天気が良ければ、きっと絶景なのでしょうね。

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大歩危(おおぼけ)駅に着き、ここで降りたのはぼくだけでした。駅のホームから川の流れる音が聞こえます。降り続く雨の中で乗り継ぎの列車を待ちます。天気が良ければなあ。

ところでこの大歩危(おおぼけ)というユニークな地名の由来をご存知でしょうか?地元の人に聞くところによりますと「大股で歩くと危険」なので「大歩危(おおぼけ)」だとか。ちなみに隣接する駅「小歩危(こぼけ)駅」は、「小股で歩いても危険」だから「小歩危」らしい。本当はどうだか分かりませんが、そういう伝承があるくらいにこの辺の地形は険しいのです。

そして、ここ大歩危は、妖怪「子泣き爺(こなきじじい)」の発祥の地だそうです。小さな駅舎の傍らにいましたよ。こなきじじい。ここらでは「児啼爺」と表記するのが正当のようです。

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山道を歩いていると、ぽつりとひとり泣いている子供がいる。何を尋ねても、泣いてばかりで返事をしない。仕方なくその子を背負って山を下りようとすると、背中の子がだんだん大石のように重くなってゆき、やがて押し潰されてしまう。たしかそんな妖怪でしたね。人の好さそうな顔が曲者です。

雨の降るホームの屋根の下で列車を待っていると、通学の学生たちが、ぽつりぽつりと現れました。そろそろそんな時間になったようです。この子たちは毎日「こなきじじい」に見守られて登下校をするんだなあ。なんか良いなあ。そういうのって幸せじゃないかな。

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<男性専用車両?>

7:24大歩危発ー8:29坪尻着(土讃線)

2両編成の列車に乗って阿波池田を目指します。窓外は変わらず渓谷の美しい景色が続いていて、それをぼうっと眺めます。なにもしない旅なのです。しばらくしてある違和感を感じました。ぼくが乗っている車両の殆どの座席は、通学の高校生で埋まっているのですが、何故か全員女子なのです。

何気にもう一つの車両を見渡すと、こちらは全員男子生徒。なんだろ、そんなルールの列車なのでしょうか。なんて、そんな訳もなくどうやら自然とそういう風に分かれて乗車しているようです。先輩たちから代々続いた伝統なんでしょうか。もし、女子車両に色気を出した男子生徒が乗り込んだりすると「こら、お前、伝統を守らんか!」みたいな事になるんでしょうか(笑)

 

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この男女別専用車両は、「阿波池田駅」の乗り換えで、一両編成の列車の為、男女混合車両に移行してゆきました。みんな恥ずかしがり屋さんなのかな。

 

<秘境「坪尻駅」へ>
 

 「阿波池田駅」で乗り換えた列車は8時29分に、この旅、最初の目的地「坪尻(つぼじり)駅」に到着しました。

この塩尻駅は全国秘境駅ランキング(こんなものがあるんですね)で、第6位という有名秘境駅なのです。(200位までランキングされています)

坪尻駅の前には道路がありません。一番近くの国道へ出るには駅の向かいの崖のような山道を15分ほど登らなければならないそうです。次の列車が来るのは2時間半後!どこへも行けず、雨空の下、小さなプレハブのような駅舎に、ぼくひとりだけです。この辺はマムシが出るとか。駅舎の中に次のような注意書きがありました。

 

「救急車を呼んでも、ここまでは来れませんので、マムシに噛まれないよう、充分注意してください」・・・・って勘弁してください!

聞きしに勝る凄い所でした。「秘境駅 坪尻」。

 

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 つづく。