南風通信

あちこち 風のように

本家よさこい参戦記2017④

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高知は明るい。そもそも、太平洋に向かって両手を広げたような地形は太陽の光を全身で受ける人のようだ。

 

高知は自由だ。周りを伺い言葉を選ぶよりも、思ったことをポンポンと口にする。「私はこういう人間やき。それでよかったら付き合っとうせ」

めんどくさい事は言わない。率直な物言いが気持ちが良い。

 

高知は不思議だ。伝統を重んじる心と新しいものを受け入れる思考が共存している。

 

 【よさこい祭り誕生】

 よさこいの踊りの原型は、1950年(昭和25年)に誕生している。1953年(昭和28年)生まれたばかりの「よさこい踊り」は、徳島県池田町に招待されたそうだ。400年の歴史を刻む「阿波踊り」の本場で、後発のひよっこ「よさこい踊り」は、打ちのめされたという。

それに刺激を受けて、新しい「よさこい鳴子踊り」が誕生するのだが、この時初めて鳴子を持つようになったそうだ。

 

当時、「よさこい鳴子踊り」を作った作曲家、武政栄策は「よさこい鳴子踊りは、今後、時代に合わせて変化してゆく事がよい」と言ったそうだが、その後、時代の変遷とともに、サンバ調、ロック調のよさこい踊りが誕生する。よさこいは最初から自由に変化してゆく事を許された祭りであったということだろうか。

 

よさこい祭りを見たある人が言っていた。「子供の頃、祭りは大人たちからやらされるものであって。ちっとも楽しくなかったし、やりたくもなかった。でも、よさこい祭りを見て、初めて祭りで感動した」

よさこい祭りは、人を形に押し込めてしまうのではなく、特に若い参加者の情熱が、枠をはみ出して新しいものを創造する事を許している。

 

よさこい祭りをここまで有名にしたのは、やはり、「ほにや」や「十人十彩」などの有名チームが出てきたからだと思う。ぼくが見ていても、その踊りの完成度は凄まじいと思う。それらのチームは途轍もない厳しい練習を行ってきているのだ。

80年代「自由な」よさこい祭りは、若者を多く引き付けたが、一方で騒音やゴミ、非行などの問題に直面したという。そんな時、「ルールで規制するのではなく、お手本となるチームを作ろう」という方針を採用したそうだ。このエピソードに土佐人気質が色濃く表れているとぼくは思う。そう言えば、土佐は板垣退助を筆頭として、自由民権運動の発祥の地でもあったっけ。「規制」よりも「自由」は、この土地と人に染み込んでいるようだ。

 

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【飲めや踊れや】

地元の人に聞くと、高知で一年の内で、一番雨が降らないのが8月の10日と11日だそうだ。それで、よさこい祭りの本祭は8月10日11日に決まったという。日本全国には、雨が降る事で有名なお祭りもあるようだが、やっぱりお祭りは晴れている方が良いに決まっている。しかし、これが踊り子たちには過酷なのだ。

8月の高知の日差しの強さと蒸し暑さは体験した者にしか分からないだろう。強烈だ。実際、ぼくらのチームでも中心メンバーの一人の女性が初日を終えた後、熱中症のような感じになったそうだ。夜になっても体温が下がらず、体温計は39度近くを指したという。2日目、それでも彼女は最後まで踊り通した。

踊り子隊に随行する「地方車」には、冷たい飲み物がストックされていて、当日いくらでも飲み放題だ。スポーツドリンクやお茶などもあるが、皆が一番手にするのはやっぱり缶ビールだ。スタート前、集合場所に集まって、すぐに缶ビールを空ける。気を付けないと一本、二本なんて、あっという間だ。正直な話、ぼくは当日何本ビールを飲んだか数えられない。しかし、この暑さだ。アルコールは体を回る前にすぐに汗になって出て行ってしまうのだろう。何故か全く酔わないのだ。そういえば一度もトイレにも行っていない。あんなにビールを飲んだのに。

夕方頃になって、踊り子隊のリーダー的な女性が、缶ビールを持って近寄ってきた。「飲んでる? 飲んでる?」いろんな人に声を掛けて鼓舞し、激励しているのだ。二日間の踊り疲れとアルコールで少しハイになっているように見える。よさこい祭りは女性が元気だ。ぼくらのチームも女性が割合でいえば90%だ。踊り子隊を引いている中心メンバーもすべて女性。ぼくが、缶ビールを合わせ「飲んでますよー」と応じると、彼女の飲み疲れなのか、踊り疲れなのか、少し疲労した様子の顔の中で、笑顔が活き活きと輝いた。高知には「魅力的で男前な女性」が多い。

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     <地方車>(他所のチームのものです。カッコイイ!)

 

 

 【やり切るぜ!】

19時を回ろうとする頃、ぼくらは予定されていた全ての会場での踊りを終えようとしていた。よさこい大賞や金賞、銀賞の受賞チームは既に決まっていたが、日の落ちた街に照明に照らされた踊り子たちが溢れ、地方車に積まれた大きなスピーカーからはリズミカルな音楽が大音量で流れ続け、街の熱は一向に収まりそうにない。

踊り子隊チームの責任者の女性の方が皆に問いかけるように大声で言った。「ここで解散しますかー?それとも受け付けが間に合わんかもしれんけんど、〇〇会場に行ってみますか?受け付けが間に合えば踊れるけど、間に合わんやったら踊れんけど」

チームは縦に長く伸びていて、最後尾の人たちまでは声が届かない。

この責任者の言葉は、伝言ゲームのようにぼくらのチームの各人を素早く伝わっていった。

「行ってみましょう!とにかく行こう!」「まだ踊りたいーー!」「踊れるかどうか分からんけんど最後までやり切ろうーー!」

伝言ゲームが最後まで届く前に次々に声が上がった。

ぼくらは、路面電車を乗り継ぎ、歩き、それからもいくつかの会場を踊り続けた。

 行き交い、すれ違うチーム同士が鳴子を打ち鳴らしエールを交換する。通りに溢れんばかりの踊り子たちの上気した笑顔は、照明に照らされ、夕闇の中に浮かんでいた。

一会場を踊り終えるとその先にはボランティアスタッフの人たちがいて、冷水や冷たい水を差しだして迎えてくれる。「お疲れさまー。どうぞー」「ありがとうございます。ごちそうさまー」

よさこい祭りは多くのボランティアスタッフに支えられているのだろうと思う。ぼくらのチームにもスタッフで随行してくれている人たちがいて、手押し車で冷えた飲み物を配ったり、ゴミの収集をしていた。そういえばここは四国。四国は「お接待」の国だ。そういった風土もよさこい祭りの一部を形成しているのではないだろうか。

 

ぼくらは「やり切る」為に移動を繰り返し、缶ビールを合わせ、踊り続けた。流石に疲労を感じる。よさこいが勝負ならば、既によさこい大賞が決まった後で踊る意味はない。しかし、皆、楽しかったし、踊りたかったのだ。思えば人生においても、勝ったり負けたりの繰り返し。むしろ勝ち続ける事の方が少ないのではないか。そうであるならば「やり切る」ことの方がもっと大切なのかもしれない。楽しんでいる事、そしてやり切る事。それ自体がそれぞれの勝利なのだと思う。だからこそよさこいは感動するのだ。「青春」そんな言葉をぼくは思い出していた。

 

普段職場では、職責によって会話をする若手とも、何度も缶ビールをぶつけ合い笑いあった。日が落ちて汗をかく量が減り、急にアルコールが回り始めたのだろうか。次へ。その次へ。ぼくらは缶ビールを何本も空け、踊り続けた。いよいよ時間一杯。最後の最後。踊りが始まる前の瞬間。ぼくは、この空間を構成するすべてを少し愛おしく思い始めていた。ぼくは、いよいよ、少し酔ってきたのだろうか。

 

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【エピローグ】

 今回のよさこい大賞を「十人十彩」が取った事と、人気チームの「ほにや」が金賞も逃し銀賞であったことは、高知の人間にはちょっとしたニュースだったのではないだろうか。

後日、髪を切りに行った時、行きつけの美容師さんから聞いた。「銀賞に決まった時、ほにやの振り付け担当の人が号泣した」らしい。

たぶん本当の話だろうと思う。「ほにや」のメンバーの練習量の凄さ、厳しさは「ただのお祭り」を超えている。その悔しさや不甲斐なさがぼくにも分かる気がする。来年の「ほにや」を楽しみにしている高知人は多いはずだ。

一方で、「十人十彩」は紆余曲折を乗り越えての「復活」を証明するよさこい大賞だ。高知人なら誰もが知っている事件から、まさかの出場辞退が数年前の事。詳細についてここでは詳しくは書かないが、よさこい祭りにはドラマがあるのだ。

 

本祭2日目。最後の踊りを終えたぼくらは、いよいよ祭りの終わりを迎えようとしていた。ここそこでいつまでも会話を止めない、若い男女は解散が名残惜しそうだ。ラインの交換もとっくに終わっている。微かな恋の兆しなどもあったろうか。おじさんは微笑ましく見守る事にする。

 

恥ずかしげもなく言い切ってしまえば、よさこい祭りには「青春」がある。若い連中には正に「青春」そのものだろうし、ぼくのようなおじさんにも「青春」の情熱を思い出させてくれる。

今、日本全国で「よさこい」が広まっているという。何故、こんなに「よさこい」が、各地で受け入れられ、人を魅了するのか。ここ高知の「本家よさこい」に触れれば、その訳が少し分かるかもしれない。

 

  

 

 

 

よさこい愛が更に深まる。 2018年参戦記はこちらです↓

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