南風通信

みなみかぜつうしん あちこち 風のように

私的不定期名曲選⑭「この曲もえーやん!」/SNOW DANCE (DREAMS COME TRUE)


DREAMS COME TRUE - 「SNOW DANCE」

 

このMVの中で、吉田美和さんは「1900年代の最後の夏」と歌っていました。それから18年経って、今、平成最後の冬を迎えています。

久し振りに聴いてみて、あの頃の吉田美和さんって、こんなに可愛らしかったんだなあ、と思います。才能がキラキラと輝いているような人だなあと。

 

これが、今年最後の更新になりそうです。『南風通信』にお越しいただいた、全ての人に感謝申し上げます。いつも励みになっています。

どうぞ、良い年末年始をお過ごしください。

いつの日も、大変なことよりも、良いことの方が多くありますように。

そして、皆様にとって来年が素敵な1年になりますように。

 

在台灣轉來轉去旅行⑤(たいわん うろうろ たび)

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 【2018.8.20】③

<雨上がりの葱油餅>

夏の台湾を旅行するにはサンダルを履いて行け、と何かで読んだと事がある。永康街を抜けてカメラのシャッターを切りながら周辺を散策していると、雨粒が落ちてきた。短い時間に強くなった雨は、点々と路面を暗く染めていって、そこここに小さな水たまりをつくっていく。そういえば折り畳み傘も持って行け、と書いてあったけど、こちらの方は忘れていた。永康街を東門駅の方へ戻る途中、目に付いたカフェで雨宿りをすることにした。

ところで、夏の台北市内を歩いているとホットパンツ姿の若い女の子を見かける事が多い。これは流行もあるのかもしれないけど、やっぱり単純に暑いからだろうなあ、と思う。それに急な雨が降っても裾が濡れないしね。

  

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Together cafeの大きめのカップのコーヒーをゆっくりと飲みながら、ガイドブックを覗き込んでの作戦会議をするくらいの時間で、雨は小雨になった。雨のお陰で気温も少し下がったようだし、出発しよう。食いしん坊のぼくらには、永康街を離れる前に寄っておかなければならない場所があるのだ。

それは屋台なのだけど、永康街を歩いたことがある人なら、いつも行列が出来ている葱油餅(ツォンヨービン)のお店と言えばピンとくるだろうと思う。その屋台「天津葱油餅」には今日も人だかりが出来ていた。雨は弱くなったけど、まだ、パラパラと小さな雨粒が降っているのにである。 

ここでハムと卵入りの葱油餅をオーダーする。客は皆、葱油餅を買うと、建物の軒下で雨を避けながら食べている。ぼくらもそれに倣って軒下で熱々の葱油餅を早速頂いた。永康街ではこれを必ず食べる事になっていて、お腹の余裕具合に関わらず、いつ食べても美味い。葱油餅はぼくらにとって、台北に来ている事を実感させてくれる食べ物の一つなのだ。

 

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 <足裏マッサージの死闘>

午後遅くには、いつもお世話になっている足裏マッサージの店で疲れを癒してもらう。MRT行天宮駅の近くにある、「活泉足體養身世界」のオーナーは日本人なのだけど、黒い直毛の長い髪をサイドに流し、色の入った眼鏡をかけている細身の男性で、その風貌はジャッキーチェンの香港時代の映画に出てくる東洋人を思い起こさせる。今回、マッサージを担当してくれた女性は50歳過ぎらしい小柄なおばちゃんだったけど、足のツボを押す指の力は極めて強く、ぼくは顔いっぱいに脂汗を浮かべてその痛みを耐えていた。ぼくがあんまり汗をかくので、途中でおばちゃんはマッサージの手を止めて、エアコンの温度を下げに行ったほどだ。同じフロアで施術をしていたマッサージ師たちがぼくの方を見て微笑んでいる。「マダ、アツイデスカ?」おばちゃんがそう言うので「ア、ダイジョウブデス」と、何故かおばちゃんと同じようなギコチナイ日本語で応える。いやいや、暑いんじゃなくて脂汗だよ、と心の中でツッコミを入れたが、日本男児の心意気で何も言わずに、涼しい顔で痛みに耐える事にした。汗だくの涼しい顔で。

  

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<蝦釣堀熱闘編>

毎回、台湾旅行の旅程は家人が念入りな情報収集を経て決定する事が、我が家の不文律となっている。そこに、ぼくの主張が入り込むことに成功するのは極めて稀である。しかし、今回の旅行を前にぼくは徹底抗戦の構えをもって主張を貫いた。

「エビ釣り堀に行きたいのです」

ぼくが台湾のエビ釣り堀のことを知ったのは、もう20年近く前の事だと思う。趣味でやっているバス釣りの専門誌「ロッド&リール」に、台湾釣行記が載っていて、そこでこのエビ釣り堀の事が出ていたのだ。海外まで釣りに行く記事を載せるなんて、あの頃のバス釣り業界はまだ景気が良かったんだなあ、と懐かしく思う。バス釣り業界は、その後の曲折を経て今に至るが、台湾釣行記を特集した「ロッド&リール」は今年休刊となってしまった。寂しく思う。

話を戻す。ぼくと家人がエビ釣り堀に着いたのは夜の8時くらいだった。家人はやはり、あまり乗り気ではないのだけれど、足裏マッサージで足取りが軽やかになったぼくは、スタスタと中に入っていった。

 

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薄暗い店内には、コンクリートの大きな水槽が据えてあって、その水槽をぐるりと囲むように客が座っている。そして、各々が細長い釣竿を水面に向かって突き出しながら、その竿先から垂れるに糸に付けたウキを見つめている。

家人は「私は見てるから」と、既に当面の消極的な方針を表明している。ぼくは、受付の男にお金を払い、レンタルの釣竿セットと餌を受け取る。料金は1時間で300元だというので、日本円でだいたい1100円くらいだろうか。

店内を改めてぐるりと見渡すと、客は観光客と地元の若者と半々くらいに見える。すぐそばのテーブルにたむろしているモヒカン風の男のグループは、地元の若者たちだろう。フロアーの奥の方から日本語も聞こえてくる。彼氏に連れられてきた若い女の子の客もいるようだ。

ぼくと家人は、客の並ぶ水槽と壁に挟まれた狭い通路を奥へ進み、自分たちの釣座を定めて座った。ぼくらの正面から角を経てこちらまでの団体客は日本人だった。その男女7、8人のグループは、大きな声で嬌声を上げながらエビ釣りを楽しんでいる。

小さくて繊細な針に、白い小エビの餌をつける。エビで鯛を釣るにはあらず、エビでエビを釣るのがここの流儀らしい。ぼくは第一投目を水中に入れる。ポンプで空気がブクブクと湧いていて、そのせいで水に流れが生じる。水面に浮くウキはその流れに乗ってゆらゆらと流れてゆく。すると、ウキの流れが止まり、水中に引き込まれた。合わせを入れると、竿から伸びる糸の先の水面下で、確かな生命力が必死の抵抗を試みている。針にかかったエビは結構引くのだ。

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抵抗空しく釣り上げられたエビは、ぼくの手の中に納まった。何だかんだで家人も楽しそうだ。すると、隣に座っていた日本人の男が話しかけてきた。

「座ってから釣るのが早いですねー」

「ええ、あ、まあ」

ぼくはフレンドリーなその男に、曖昧な返事をする。釣りに集中し過ぎていて答えが咄嗟に浮かばなかったのだ。

バス釣りを20年以上やっているが、釣りはどんな釣りでも通じるところがあるようだ。

その後は、そのフレンドリーくんと会話を交わしながら釣りを続ける。

彼らは広島から来たらしく、そのメンバーは皆、職場の仲間で、社員旅行なのだとか。会話の途中で彼のウキが水中に沈み横に移動していく。ぼくはそれを見ながら、水中で針をくわえたエビが水底を急ぎ足に歩いていく様子を想像する。彼はまだ合わせずに、じっくり送り込んでいる。エビが付いている事を確信し、ウキの動きを見ながらタイミングをはかっているのだ。隣でぼくはジリジリとする。

「うわあ、あれぇーー」

ようやく合わせを入れたフレンドリーくんの竿は、スカッという感じで空を切った。その先にエビはもういなかった。

「今、エビが食ってたんだよー。絶対食ってたんやけどなあ」

フレンドリーくんは仲間たちに向かって言う。

「本当かあ?気のせいじゃねーかー」「へたくそー。わははは」

一同がまた盛り上がる。

その後、ぼくとフレンドリーくんは一匹づつのエビを釣った。

そして、やがて、フレンドリーくんのグループは満足そうに帰って行った。

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日本人の団体客がいなくなり、周囲が静かになる。ぼくはまた、釣りに集中する。ふと気が付くとぼくの隣に地元の若い男が座って竿を構えている。さっき入口付近のテーブルに居たモヒカン男のグループに居た青年だ。周囲を見渡すとモヒカン男も釣り竿を構えて真剣な表情を浮かべている。彼らはどうやらここの常連らしい。彼らの使っている竿や仕掛けは、ぼくが使っているレンタルのものとは、少し違っていた。きっと各々「マイ釣竿」を持ち込んでいるのだろう。竿を高く構え、ウキが吸い込まれた時の合わせは、鋭く無駄がない。

ぼくの隣の髪の長い男は、整った顔にひょろりとした体つきで、ボーダーのシャツが少し大きく見えた。昔、麻雀に憑りつかれて学校に来なくなり、留年を繰り返した大学の先輩がいたが、その先輩に似ていた。インテリ崩れの匂いのするそのボーダーシャツの男は、缶ビールを飲みながら釣っている。台北ではお酒を飲む人をあまり見かけないのだけれど、彼は美味そうに台湾ビールを飲んでいた。

ボーダー男が、高い構えから鋭く合わせを入れると、だいたいエビが釣れた。かなりの使い手なのだ。エビが釣れると仲間たちと大きな声の台湾語でやり取りする。

「今日は食いがシブいよ」

なんて言ってるのだろと思う。言葉が全く分からないけど。

 

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ぼくは1時間をかけて計4匹のエビを釣り上げた。数回のバラシが無ければ、もっと釣れたはずだけど、まあ良しとしよう。

この釣堀では、少しのお金を払えば釣ったばかりのエビを調理して食べさせてくれる。ぼくらはもちろん食べる事にする。ぷりぷりのエビを頬張った時には、さすがに家人も嬉しそうだった。

九時を回る頃には、店内はほぼ常連のみになっていった。彼らの釣りを眺めながら、まあ、健全な遊びだなと思う。ボーダーシャツが独特の構えで右手に竿を持ち、左手で缶ビールを飲んでいる。観光客のいなくなった店内で、彼らの長い夜はこれから始まりそうだった。

 

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 つづく

年末の日々

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近所の公園のイチョウの木が丸裸になっていました。暖かいと言われるこの冬も、いよいよそれらしくなってきたようです。

家人に付き合わされた漢方薬局で、ちょっと漢方にハマったりしています。

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それから、40歳以上限定のマラソン大会で10キロを走りました。途中で、ご老人と言って差し支えないような風貌の方から、軽く抜き去られてしまったり。鍛えてる方は年齢関係ないですね。見習いたいです。

 

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FPのグループの忘年会を終えて、ようやくパソコンの前でこれを書いています。このグループの忘年会は毎年13時スタートなのです。昼間とは思えない盛り上がり。さすが酒国高知ですね。忘年会続きでやや疲れ気味です。

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台湾の旅行記の続きが書き上がらず、近況報告になってしまったのでした。毎週更新は大変です。もっと頻繁に更新している方々を尊敬しています。今日はこの辺で。

私的不定期名曲選⑬「この曲もえーやん!」/ IMAGINE ( 忌野清志郎)


忌野清志郎 IMAGINE

 

12月8日はビートルズのメンバーだった、ジョン・レノンの命日です。1980年、長い育児休暇を終えたジョンは、妻のヨーコと一緒にアルバムを制作しました。「ダブルファンタジー」と名付けられたこのアルバムの中で、ジョンはとても幸せそうでした。

70年代のジョンは、政治色の強い活動をしていたり、ヨーコとの不和から迷走したりと不安定な時期でした。75年にアルバム「ロックン・ロール」で、ロックミュージックに回帰した彼は、やっと自分の歩むべき道に生還したように見えました。それから5年の育児休暇を経ての活動再開の直後に。

「ダブルファンタジー」のリリース直後の12月8日、ジョンはセントラルパークからほど近い、ダコタハウスの前で凶弾に倒れ亡くなりました。

 

「想像してごらん。国境なんて無いんだと」

ジョンの事を夢想家という人がいる。そうかもしれません。

21世紀になっても国家間、民族間の諍いは無くならないし、むしろ酷くなりつつように見えます。

忌野清志郎も「夢想家」でしょうか。

そして、大きすぎる夢は、その身を食い破るのでしょうか。

もう、二人とも、この世界には居なくなってしまいました。

 

それでも「イマジン」は、2018年の今でも流れ続けています。

 

 

在台灣轉來轉去旅行④(たいわん うろうろ たび)

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【2018.8.20】②

<可愛い台湾>

東門市場を抜けて金山路を渡ると、天井の無いマーケットが伸びている路地が見えてきた。肉や野菜や果物に惣菜と賑やかに並んでいる。日除けの下でいかにも商売人といったおばちゃんが、試食してゆけと切った果物を差し出すが、ここは遠慮することにする。だってこれからいろいろと食べなきゃならないからね。とにかく、こちらは活気があった。

交通量の多い信義路を渡り、永康街の入り口に差しかかると、鼎泰豊(ディンタイフォン)に並ぶ人の行列が見えた。今回、旅行前に家人と「小籠包は絶対食べよう」と誓い合ったのだが、この行列を見るとやっぱりスルーしたくなる。並んでる時間にアチコチ行けるでしょう?ぼくらの旅行は、知らない所を求めてウロウロする事が最優先なのだ。

昨年、永康街の奥にあるお洒落なレストラン「TAKE FIVE五方食蔵」で出会った、台湾に嫁いだという若い日本人女性の事を思い出した。

「鼎泰豊は日本人と韓国人の観光客ばかりで、地元の人は行かないんですよ」そう言って彼女は笑った。言葉に難儀して、言語学校に通っていると言っていたけど元気だろうか。たった一度、テーブルが隣になっただけの、日台の若い夫婦の事を思った。

 永康街を家人の後について進む。家人の付箋だらけのトラベラーズノートが活躍し、いくつかの雑貨店を巡る。来る度に思うのだけど、台湾にはお洒落で可愛い雑貨が多い。それらを眺めているだけでも気分が上がってくる。ぼくは文具や雑貨を見るのが好きなのだ。台湾に来るとぼくの「可愛いセンサー」の感度が上がってしまい、店内でたくさんの大人女子の客に紛れて「あ、これ可愛い!」などと言っているぼくを、家人は「女子おじさん」と揶揄する。可愛いものは可愛いのだ。気持ち悪いなんて言わないで。そんなこんなで、可愛い雑貨の店「雲彩軒」で、原住民の柄が入ったパスケースなど数点を購入した。

 

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<美味しい台湾>

永康街にある「度小月」は、創業100年を超える、台南で有名な麺料理のお店だ。擔仔麺(タンツウミェン)という麺料理がここの看板メニューなんだけど、これは、むき身のエビと肉味噌の乗ったエビ出汁の麺料理で、ガイドブックでこれを見た時に一目惚れしてしまい、家人に「ここだけは行きたい」とぼくは主張したのだ。

「度小月」は台北市内に二店舗あるそうで、永康街のお店は比較的こじんまりとしたお店だ。テーブルについて早速、擔仔麺をオーダーする。それからイカ団子の揚げ物と、細い緑の茎野菜の炒め物も追加。

食レポは上手くないので上手く伝えられないが、どれも美味しく頂きました。擔仔麺は一人前としては小ぶりで物足りないかも。さすがに看板メニューで美味しんだけどね。ぼくと家人の一致した意見で、茎野菜の炒め物がとても美味しかった。野菜に干した小エビの出汁が効いてて、その旨みと野菜のシャキシャキ感がとても良いのだ。台湾一食目、ご馳走様でした。

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 <永康公園の愚かな思い出>

台湾の夏はとても暑い。この日も気温は30度を優に超えて、太陽はジリジリとぼくらを照射し続ける。毎年、この時期に夏休みを取るので、どうしても暑い台湾を過ごす事になってしまうのは仕方がないのだけど、まあ暑い。永康街の人波を泳ぐように歩き、喉がカラカラになってくると、フルーツジュースを飲みたくなる。台北には冷たくて、とても美味しい生フルーツジュースのスタンドが沢山ある。その充実ぶりを見るに、これは彼の地の暑さ凌ぎの知恵なのだろう、と思う。台北に来る度に、ぼくらもジュースで暑さを凌ぐのだ。中でもスイカジュースは秀逸だと思う。自然なスイカの甘みと、飲むとスーッと暑さが引いて行くような、体を冷やす効果もあるようでとても気に入って飲んでいる。でも、今年はまだスイカジュースを見かけない。昨年はコンビニにもあったのに。でも、味はやっぱりコンビニよりジューススタンドの物の方が格段に美味い。

永康公園の正面にあるジューススタンド「COCO都可」で、タピオカ入りのオレンジジュース(スイカジュースは無かった)を買って、永康公園の木陰で休憩した。永康公園は永康街の真ん中あたりに位置し、多くの人たちが木陰で涼んでいる。夕方になると小さな子供を連れたお母さんたちもやって来る。黄昏時には、観光客も住民も一緒くたに寛いでいる。

この永康公園には、ちょっとイタイ思い出がある。初めて台北を訪れた時にもこの永康公園に来たのだけれど、公園のベンチにスマートフォンを置き忘れてしまったのだ。スマートフォンが無い事に気が付いたのは、一日中遊び惚けてホテルに戻った午後10時過ぎ。NTTドコモなど各方面に電話を入れた後、ホテルの人に付き添ってもらい(有難かった)近くの交番まで遺失物届を出しに行った。交番で言葉が通じずに、お巡りさんもぼくも双方「どうしたものか・・」という雰囲気が漂い始めた時、筆談でコミュニケーションが取れる事が分かり、ぼくは心の中で「ブラボォー!」と叫んだよ。その時に台湾語でスマートフォンは「手機」と書くらしい事を知った。遺失物届は何とか提出する事が出来たのだが、その申請書には生活ぶりを記入する欄があり、「富裕」とか「困苦」とかそんな文字が並んであって丸を付けるようになっていた。旅行者には伺い知れないが、台北の生活や社会はそれなりに問題を抱えているのだろう、と思った。

それ以来、手にモノを持って歩いていると「鞄にしまって!」と家人から注意される事になった。そんな事があったりしたけれど、永康公園は台北で最も好きな場所の一つだ。

 

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つづく

在台灣轉來轉去旅行③(たいわん うろうろ たび)

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【2018.8.20】①

<朝の出来事>

台湾2日目の朝。昨夜は、部屋の空調を上手く操作できなくて少し寒かった。寝不足の感じのぼうっとした頭でリモコンをさぐりTVをつける。ぼくは台湾滞在中のホテルではTVをつけっぱなしな事が多い。TVから早口に流れてくる(ぼくには台湾語は早口に聞こえる)台湾語を耳から肌から染み込ませたいと思うのだ。その方が現地が素早く馴染んでくる感じがするでしょう?

ところが、つけたTVのモニターには日本でお馴染みのキャラクター「ちびまる子ちゃん」が現れた。ただし、もちろん台湾語で話してるけど。「ちびまる子ちゃん」は、どうやら台湾でも人気の様子で、こちらでは「桜桃小丸子」と表記するみたい。漢字の並びが見事に「ちびまる子ちゃん」を現してると思う。しかも、台湾語の声優さんは日本の声優さんの雰囲気を見事に再現していて、「まる子」は「日本のまる子」のまんま、いい加減のお調子者の声だし、まる子の父「ヒロシ」は、テキトーで、優柔不断な「ヒロシ」そのものの声だ。台湾の番組スタッフの「ちびまる子愛」が伝わってくるねえ。

台湾で最初の朝食はホテルの朝食バイキングを頂くことにする。1階の広いスペースのレストランでは、沢山の観光客が朝食をとっている。入口のすぐそばにはヨーロッパからのツアーとみられる、大柄の白人7、8人のグループが陣取っていた。金色の髪と髭を持つ男の、半袖、短パンから伸びる丸太のような腕と足には、髪と同じ金髪がキラキラと光っている。西洋人はやっぱり大きいよなあ、と思わされる。

ぼくらのテーブルの隣には日本の大学生だろうか、細身の若い男の二人組が気だるそうにパンをかじっている。片方の男が言う。「3日もいると感激も薄れるなあ」。若い二人組は相変わらず気だるそうにパンをかじっていて、なんがか人生に疲れた初老の男たちのように見えた。

午前九時前には、いよいよホテルを出発する。ぼくらには行くべき「ワクワク」が、抱えきれないほど一杯なのだ。

 

<ウロウロし始める>

片側3車線の広い松江路に沿って歩き、MRT行天宮駅から地下に下る。ここからしばらくは「現地コーディネーター」と化した家人の後ろをついて行くのみだ。ぼくらの旅行は、ただウロウロと街を歩き回り、パチパチと写真を撮って、時々安くて美味しいものを食べられれば万事OKといったもの。そんな様子だから、台湾訪問3回目にして、未だに九份にも行った事がない。それどころか前回来た時には、あろうことか小籠包を食べ忘れた!のだ。

今回の旅行を前にして、ぼくと家人は深く誓い合ったのだ。「小籠包は必ず食べようね」。旅の記録はこれから始まるが、先にネタばらししておくと、今回も小籠包を食べ損なったんだ。だって、台湾には美味しいものが多すぎるんだよう。

  

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<薄暗い東門市場>

今回、最初に訪れたのは、ぼくと家人が大好きな「永康街」のあるMRT東門駅。しかし、今回はその「永康街」に行く前に寄るべき場所があるらしい。家人は、付箋で一杯になった茶色のトラベラーズノートを片手に東門駅を地上に抜けた。早歩きになってるよ。そうして目指すは「東門市場」なのだ。

台湾には観光で有名な夜市が沢山あるけど、ここ「東門市場」は、現地の人が肉魚野菜などを求めてやってくる生活市場なのだそう。信義路と金山路の交差点の北側に、トタン屋根のアーケードのような「東門市場」が広がる。台湾の、八月の強い日差しから逃れるように、市場へ突入する。・・・が、市場の通路は薄暗く人通りもない。しんとして薄暗い通路に、漢字がひたすら並ぶ大きな看板が連なり、時折現れる小さな窓の向こうに、アジア柄の服が吊ってあったりして、ジャッキーチェンの映画のセットのような気がしてくる。

あれれー、何かがおかしい。市場の賑やかさと活気がまるで無い。あとで分かったのだが、この日は月曜日でほとんどの店は定休日だったようなのだ。がらんとした東門市場で、それでもぼくらはパチパチとシャッターを切って回りそれなりに楽しんだ。カメラを構えて暗い路地を進んでゆくと、不意にバイクが目の前に現れて驚いたり、誰も居ないと思っていた通路のすぐそばの暗がりに人が座っていてびっくりしたり、お化け屋敷的アトラクション的に?充分楽しめたのだ。

再び日の光の下に戻り、信義路の人の流れに紛れる。ぼくらは、いよいよ大好きな「永康街」へ向かった。

 

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 つづく

在台灣轉來轉去旅行②(たいわん うろうろ たび)

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【2018.8.19】 ②

<小窓の外の灯>

台湾に向かう飛行機に乗る時に、ぼくは、いつも読めもしない台湾語の新聞を手に取る。そして、漢字の羅列に目を流してゆくと、読めない事について「いいぞ、いいぞ」と思う。ぼくは、結構な活字中毒者なのだけど、ふと気が付くと、何かを読もうとしている自分がいる事がしばしばだ。文庫本、雑誌、新聞、パンフレットからチラシに至るまで、文字が書いてあるものを見つけると手にしようとしてしまう。

ところが、日本語が無い場所へ行くと、意味が分からないから当然文字を読まなくなってくる。そうすると、目線はやや上を向き、興味は目の前の出来事に移ってゆくではないか。外国に行って読めるものが無いというのは、なかなか良いことだ。子供の頃、まだ文字が読めなかった幼少期には、世界はとても広く、全てが好奇心の対象だった。そんな感覚に戻って行くのかな。だけど、台湾の言葉は漢字だし、連想ゲームのように何となく意味が想像できてしまうのだけど。

 

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飛行機が離陸してしばらくすると、CAのお姉さんたちが食事の準備を始めた。中華料理風の香辛料と味付けのチキンが乗ったご飯を食べ終わるとすることも無くなってしまう。

機内のTVモニターに流れる映像の中で、黒縁めがねの男が何かしゃべっている。男の顔がとてもアジア顔で、同じ東洋人でも日本人の顔とはずいぶん感じが違うなあ、などと思う。何故かぼくは、アジア的なものに郷愁と安堵を感じてしまう。やはり、遠い遠い先祖は、大陸から流れて来たんだろうなあ、と思う。

字幕を眺めてると、どうやら台湾では子供の虫歯が問題になっていて、その為の解決策を学校単位で行っているという事のようだ。内容は全体の一割から二割くらいしか分からないので、ちょうど良い塩梅だ。でも、もうちょっと面白いものを流してほしいよ。

そうこうしてるうちに、小さな、暗い窓の外に赤味のかかったな光が灯り始めた。

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<台湾時間の始まり>

桃園空港に到着すると、とても綺麗な日本語を話す張さんという青年が出迎えてくれた。

「タイワンハ ハジメテ デスカ?」

ぼくらが三度目です、と答えると「アア ジャア、モウベテランデスネ」と言って微笑んだ。

「イチオウ タイワンデノ チュウイテンヲ イッテオキマスネ」

と言うと、感じの良い笑顔の張さんはいくつかの「業務連絡のようなもの」を伝えてくれる。

①水道水は飲まない事 ②トイレに紙を流さない事 ③スリに注意する事

そして、ここ最近の気温から、これから一週間の天気予報などなど。

感じの良い笑顔を絶やさない、張さんのスムースな仕事ぶりには好感が持てる。今回の旅行は阪急交通社で申し込んだのだけど、高松空港での社員さんの対応も良かったし、些細な事だけど「阪急交通社いいぞ、いいぞ」と思った。

張さんに連れられて、人の混みあう通路を抜け、空港の建物を外に出ると、途端にむっとした熱気を帯びた空気に包まれた。多くの人の声が飛び交い、車のクラクションが鳴り合う。到着客を迎える車が列をなしている。夜になっても八月の台湾はとても暑いのだけど、今回はまだマシな感じがするのは、日本がそれ以上に暑いからだと思う。

迎えの車に乗り込み、空港から市街地に続く夜の高速道を走る。今日は日曜日で、時刻は午後九時を回っていたけど、街はまだまだザワザワしてる感じだ。どうも、台湾の人は宵っ張りのようだ。

市街地に入る頃、車窓に近づいてくる街の灯を見ていると、昨年の台湾旅行の感覚が蘇って来た。台湾の空気が体内に流れ込んでくる。そこでようやく、時差に合わせて腕時計を1時間遅らせた。

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ホテルにチェックインすると、ぼくらは荷物も解かずに再びホテルを出ることにした。ぼくも家人も、早く台北の街を歩きたくて仕方ないのだ。といってもぼくらには行くべき当てもなく、結局、近くのセブンイレブンへ吸い込まれた。

家人は「これが飲みたかったー」と、前回の旅行でお気に入りだったミルクティーを購入。これは「純萃。喝(ジュンスイホ)」というもので、程よく甘くて、すっきりしていて美味しい。ボトルがお洒落なのも良いと思う。そしてぼくは台湾ビールを。

ホテルに戻り、TVをつけると「誰是大歌神」というバラエティ番組をやっていたので、ぼうっと眺める。どうやら、歌を競う勝ち抜けトーナメントのようなものらしい。台湾のTVバラエティは日本のものより、ドタバタ感があって情感豊かで好ましい。今も、画面の中で歌い終わった青年が、一生懸命に何かを訴えている。字幕でなんとなく分かるのだが、どうも歌の師匠がいたんだけど、亡くなってしまい、今の自分があるのは師匠のお陰だ。この番組で師匠に恩返しをしたいのだ、というようなことらしい(たぶん)。もらい泣きするゲストたち。ぼくは台湾のTVを眺めるのが好きだ。

TVの画面を眺めながら、薄くて不味い台湾ビールを飲むと、ああ、台北に来たんだなあ、と心から思えるのだった。

 

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つづく